俺と王子と情熱と
時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。
Adventus 12
「ボクね、本当にキミの事が好きなんだ」
やはりそれはとても深く、俺の心に沁みとおる声で。
「自分でも信じられないくらいに、とても、とても」
胸に触れた指先から声が伝わり、たかだかそんな事で俺は王子との繋がりを深く感じた。物理的な接触がこうして、心理的な距離感をも近づけてしまう。これは彼の無意識なのか、それとも彼の策略なのか。そんな事を思う自分の今が、なんだかとても悲しく思えた。
「……でも、キミはボクが怖いんだ」
ボソリと呟くその言葉に、俺はドキリと身を震わせる。
「いいんだ。ボクもボクが怖いのだから」
王子は顔を上げずに呟き続けているので、どういう表情でそれを言ったかわからなかった。けれどワントーン下がってしまったその言葉は俺達二人の間に横たわる溝の深さを明確にした。
「キミはボクの性質を理解している。つまり、ボクがキミなんてどうとでも出来ちゃう人間なんだって、そういう事を実によく把握している」
自分でもままならない程の王子への疑心の強さを、彼は俺と同じ目をしてずっと一人で見つめていたのだ。さもありなんと思いながら?
「王子は……」
「ん?」
「なんでもわかっちゃうんですね」
俯く王子にそう呟くと、クスリと笑って顔を上げた。
「キミって子は、賢いのか、はたまた愚かなのか、」
「?」
「他人のミスリードを含んだ類推に対して、それが正解だと素直に口にするのは悪手だザッキー」
「あ……」
「気がいいのはわかるけれど、簡単に他人に付け込まれてしまうよ?」
そうして王子は溜息をついた。
「ゴメンね。これは親切のつもりの言葉で……でもこんな事を言ったりするからキミは警戒を深める羽目になる。だよね?……ボクは一体何してるんだか」
「ボクはキミがとても好きで、だから当然手に入れたくて。でもその反面、ボクみたいのには引っかかって欲しくないとも思ってて……全く馬鹿なのはボクの方だな」
沢山の王子が俺を見つめる、そんな事を肌で感じた。私欲が主軸の王子が一人。俺に寄り添う王子が一人。そうしてやれやれと笑う王子と、それを解説する王子。
「こんなにもボクはキミの事で一杯で、なのに何一つ本当のキミをこの手に……」
いつの間にか。ジッと見つめる王子のその目は、暗くて甘い光を宿し始めてしまっていた。この目の不穏が大層怖くて、思わず僅かに腕を引く。けれどしかと繋がれた王子のその手はいつもの様には離れなかった。
(王、子……?)
初めて感じる王子の拘束。拍子抜けするほど気のない王子は、一体何処へ行ったのか?
「なんスか?あの……」
「……」
「ちょ、王子。やめてくださいこういう……」
今はもう全身がまるで心臓のようで、それでも俺は二、三、彼から逃れる為に必死になって腕を引いた。けれど一向に離してくれる気配はなかった。
「ザッキー、キミを手に入れるのは本当にボクにとって簡単な事だ。キミが想像する以上にきっと、吃驚するくらい。恋の駆け引きに不慣れなキミなら、攻略なんて、いくらでも」
まるで言葉など解さないみたいに、俺を無視して王子が言う。
「ほらね?キミはボクに本気で抵抗なんて出来やしない。やりたい放題さ」
「は、離してくだ……」
ただただ力の入らない萎えた体で俺はもがいた。けれど王子は甘暗い目線を保ったまま俺を悠々と見下していた。その姿はまさに絶対的な支配者。他者を黙らせる威圧的な存在。
そのうちゾクゾクとして体が凍り、俺は手を引く事も出来なくなった。するとその様子に満足したのか王子は自嘲気味にフ、と笑い、そうして俺の手を開放した。
「今までやらなかったのはキミがとても大切だから。頑張ってたんだよ、一生懸命」
優しい王子の穏やかな微笑み。とても同じ人物とは思えなかった。
俺の頭はもう滅茶苦茶で、この動悸が恐怖か期待か、そんな事すらわからなくなった。唯一俺がわかる事はといえば、とにもかくにも離れたこの手が寒い事。必死で振り払おうと思ったその手。けれどいざこうして離された瞬間、ただその事だけが辛かった。
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