俺と王子と情熱と
時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。
Adventus 11
「ザッキー……ボクは今だって頑張っているよ?」
そして王子は再度両手を差し出しこう言った。
「だって、わかるでしょう?本当はもう少しキミと手を、って、ボクがそう思ってないわけがないじゃないか」
けれど王子は己の両腕を宙ぶらりんに放置したまま、ポツポツと独り言のようにこう続けた。
「でも、駄目?……だよ、うん……当たり前だ」
「ザッキーは酷く嫌がって、だからボクは……そうさ、こんな事したってなんの意味が」
それは最早会話でもなく、俺は何をどう反応していいものやら考えあぐねる。そのまま二人は馬鹿みたいに、ただ茫然とその手を見つめた。
「意味なんて、」
けれど俺は今、彼の言葉とはまるで逆に、王子のその手のぬくもりがとても、とても、恋しく思えていた。離れた瞬間から心細がる俺の指先が、嫌だ離れていたくない、としっかりとその快感を記憶していて。王子はそれを求めていた。俺もそれを求めていた。けれど彼はそれをやめ、俺も彼から逃げ出した。そんな今の状況を眺め、心が寒く孤独だった。
「一体ボクは何をやってるんだろう」
「こんな事、考えられない」
そして続く独り言のような言葉の数々。まるで俺の口から漏れた言葉に思えてしまった。掴む王子の指先が怖く、自ら俺は手を離したのだ。一体何をやっているのだと、こんな事考えられないと戸惑っていた。
そうしている間にも王子は、差し出す己の二つの腕を、悲しそうな目で見つめながら独り言を続けていた。
「無理強いしちゃいけないのはわかってる。わかってるから解放したんだ」
「なら、何故差し出す?」
「自分でもよくわからない、とても変だ。はっきりしない」
「この手をこの先どうすればいいのか、そんな事ですら判断が」
王子のその手をどうしたらいいのか、俺にもそれがわからなかった。ただ指先は冷たくなって、誤魔化す為に自分で拳を作って握りしめた。
「ボク達が引き合う事。繋がり合う事。それは……」
「倫理的にはNO」
「社会的にもNO」
「キミの為にも、ボクの為にも、チームの為にも、家族の為にも」
「今すぐキミをここから叩き出して、私的な交流は絶つべきだ」
「どこをどう切り取ってみても、その断面は全部NO」
「なのにこの腕をおろせない」
「どうして?ボクはガラにもなくこんなに頑張ってるというのに」
「キミを乞う事を止められない」
「本当に……意味がわからない……」
王子独特の眩さは薄れ、その声は抑揚もなく聞き取りにくい程力ない。けれど停電の夜に灯るロウソクの様にささやかながら、彼は唯一すがれる俺の秘密の拠り所。王子はやはり俺にとって、消えれば世界が終わってしまう、そんなかけがえのない存在だ。
(そうだ、これが王子……だ。どんなになっても、揺るぎようのない、俺の思う、俺の、王子……)
(どうしよう、この感覚、いつもの、あの……)
(寂しい?そうか俺、寂しいんだ。傍にいるのにこんなにも離れてしまっていて)
(王子、一緒に居るのに。独りでそうやって過ごさないでいて欲しい……引き付けたい。もっとこっち、王子の気持ち、)
(王子、こっち。確認したい。今俺達が一緒に居る事)
そんな時王子がポツリと俺に向けてこう言った。
「ザッキー、どうしよう、キミに触れたい」
「そうやって今すぐ確かめてみたい。本当にキミがそこにいるのか」
(あぁ……王子、も?)
けれど穏やかな暖かさを目で感じても、いざそれに触れれば王子は明らかに炎なのだ。無茶をすれば火傷する。ろくでもない未来だけが、想像出来た。
(そう、ろくでもない結果しか)
(でも……さっきみたいな感触を知ってしまうと)
情熱の強さを示すかのような、彼の心音が思い起こされ、もうこのままいっそ、と馬鹿な事を考えた。すると呼応するように彼がこんな風に応えてしまう。
「……駄目なの、全部わかってる、でも、でもね?ザッキー、火傷したい」
「だって、さっき知ってしまった。もう、ボクはキミを忘れられない」
俺の心を読み上げていたはずの王子の言葉は、気付けば彼自身の言葉にすり替わってしまっていた。
「火中のキミを拾いたくて、暖炉に手を伸ばすボクを、キミは馬鹿だって言うんだろ?」
「暖炉はただ傍にいて暖まるものだ。なのにボクはそれが欲しい」
「そんなとこで真っ赤に燃えてる、キミはとても残酷だ」
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