俺と王子と情熱と
時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。
Adventus 05
誰も気付かぬ僅かな事だ。けれど日々の練習でそれを感じた。
「赤崎どうした!最近めっちゃ調子いいな!」
今日は一段と決定率が上がった感じで、周りの評価も上々で。けれど明るく笑って見せても、俺の心は真っ暗だった。
実はこうして連携が楽になるのには2つのパターンがあるのだ。今回はどちらかというと良くない傾向のものに感じる。
(王子、完全に合わせに来て、る?)
届けばちょっとずつ試練を課す。それが日頃の彼の無言の中にあるメッセージだ。俺の調子が良ければ良い程、彼は好んでそれをやるし、俺も届いて感動する。己の成長を実感するのは寧ろ無茶なチャレンジを意図するパスで、追って追われて、繋がり合うのがいつもの俺達の間の秘密の会話であった。
(ぬるい。手抜き、か?それとも)
王子は時々、俺を道具にもする。自らがリスクを背負う際は、無言でフォローを要求した。当然気付かぬ時もあったものの、その頻度も減っていた。なのに。
(なんだよこれ……要求も叱責も、何も王子から感じられない。ないからか?それとも人間関係が拗れた事で俺の感覚が鈍ってしまった?)
足元がざわつく違和感の中、記録上だけ功績が伸びる。何度も、何度も、考えた。この現象は是なのか非なのか。ボールが来ない。ほとんど来ない。でも来た時は殆ど決まる。適切な組み立て、シンプルなはたき。お綺麗で、大変わかりやすいゲームメイク?
(王子?これではただの……)
経過するにつれ疑惑が確信に繋がっていく。今の王子には、あの何をしでかすか想像もつかない、得体のしれない気配がない。データ的には上手くいってはいる。今だって紅白戦では王子の組が負けなしで。
(誰も気が付かないのか?それとも俺の考え過ぎか?)
見て見ぬふりなど性分じゃない。このムードを壊したって、俺は本質に突っ走る。だって本番で負けては意味がないのだ。なのに腹立たしいまでのこの戸惑い。何も考えずズカリと一刺し出来ない理由は、紛れもなくその相手があの王子だからだった。
「ゴラッソ!」
何度目かの賞賛をこの身に受け止めながら、心のモヤモヤがまた増えた。そうなのだ。俺には今起きているこの現象が是なのか非なのか、それだけでなく、何かが起きているかどうかすらなんだかイマイチわからなかった。理由があるなら意味が知りたい。けれど理解出来る自信がない。逃げ腰なんて俺らしくない、でも聞けない。
(彼に関わってから俺という人間が、そして俺達の間の関係性も更におかしくなってしまった。その事だけは事実だ。このままでは駄目だ。それだけはわかる。誰がわからなくても、自分にだけは)
数日して、やっぱり今日こそは王子に何かを言うべきだと意を決した。素直に答えてくれるとは当然思いもしないけれど、確認しないと始まらない。彼はこれを是とするのか、それとも、非と思いながらそれをやるのか。
(仕事場は遊び場じゃない。攻撃陣の不協和音はもしそれがあるならこれは非だ。そうだろ?王子。俺は気持ちいい程プレイがハマる今をとてもおかしいと感じてる。なんだか納得できないんだ)
休憩に入った時点でさりげなく、そう今日の天気の話くらいから。いきなり真正面から当たっても煙に巻かれる事は明らかであり、いや、それは言い訳で。彼と話すのが怖かったから、いつも通り出来ない俺はらしくない程の稚拙な作戦を立てていた。
なのに王子は監督に呼ばれ、そのままピッチに戻らなかった。
「チ、王子早退かよ。どうなってんだ、ヤル気あんのか?」
逃げられたと感じた俺が小声で文句をつけると、俺が帰らせた、と監督が言った。そして、それだけではなく、明日も王子は来ないようだ。
話しかけようとした途端に、というのは当然単なる偶然だった。けれど出鼻を挫かれた俺は、ひどくむしゃくしゃした気持ちになった。だからずっと。ずっと自分の判断の遅さに対する叱責と、そして王子の事を考えた。そして彼の持っているであろう俺の知らない解が何かと探した。
わからない解探しにつかれ始めた頃、俺は自分が自分を騙しているかどうかについても考え始めた。
(もしかして俺、王子との知恵比べをずっと欲して……勝手に今に不満を作り出してしまったんだろうか?わかんねぇ、王子)
ずっと彼の事を考えていた。手が冷たくて痛いくらいで、それを感じる度考えていた。包まれた手の温かさと、強い響きを持つ心音。そして想起される甘くて苦いあの部屋の。
(匂いと記憶が繋がってるなら逆もまた然りと言うわけか?)
ぼんやりプレイに喝を入れる。両手で頬を叩いて指先が痺れ、おかげで寒さが少しまぎれた。
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