俺と王子と情熱と
時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。
Adventus 04
「絶対に手渡しでお願いね。急ぎだから」
帰りがけに達海さんに呼び止められて、取材資料が入っているというでっかい封筒を渡された。
「あとちゃんとあいつが目を通すとこも確認しといて」
「なんで俺が」
「たまたま今日用事があるらしいんだよね、あいつ。わりぃけどお遣い頼むわ」
そういって、クイ、と首を事務所方向に傾げている。また後藤さんが厄介事に巻き込まれてしまっているんだと溜息が出た。飛び込み取材を嫌がる王子を説得するのは彼が担当。ユース上がりはこれだから困る。長く居るだけ事情を知って、余計な情にほだされる。
そして何よりこれが大事。達海さんにとってこの手の情は利用するものでないという事。相手が選手であれば尚更の事。
(つまり、よっぽどぶっ飛ばせない取材って事)
単なる配達の用事だった。居残り練習で日が暮れた今でも、ワーカーホリックが事務所の机にへばりついている事だろう。けれどその選択がナシなのはおそらく、機嫌の悪い狼の元に赤ずきんを差し向ける事など出来ないからに違いない。赤ずきん本人は何も考えず行きかねないが、配慮がバレない形で処理するつもりか。
(ま、流石の王子もそこまで節操ないとは思わねぇけどな。のこのこ自宅まで来たからってその場でスタッフに手を付けるとかシャレになら……)
そこまで考えてはたと気づいた。あの狼には節操どころか見境もない。俺も一人の赤ずきんであった事実。
(そうだよな。あの人時々吃驚する程、容赦ないとこあっから……)
俺はずっと彼の善性を信じてきていた。彼の悪ぶるあの性分は天邪鬼な性格がそうさせるだけ。だからこそ世の人々は何をやっても彼を慕い、「王子」よろしく様々な自由を手に入れる権利を持てるのだと。
でも俺の心はあの日混乱を重ね、善性こそが彼のブラフと真偽の程を疑った。
「……手渡しっつわれても、王子、家に居るのかよ」
森の家には狼がいて、お菓子の家には魔女がいる。けれど俺はあの日泣いて逃げては、森の外れでずきんを脱いだ。もう二度と負けたくはない俺だったので、沢山沢山考えた。心の中であの日の話を、何度も何度もやり直した。
(俺の今を見せる事で、王子は何を思うだろう?はっきりじゃない、少しわかったような気がするんだ)
俺の興味はいつもいつも、彼が何を思うかだった。
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