お花結び

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俺と王子と情熱と

時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。

        ジノザキ

Felice Anno Nuovo! 03

 立ち去る王子がキッチンへ。カサリと手にした四角いものは俺が持ってきたあの封筒だ。

「あ、忘れてた、それ」

 俺がその事を思い出せば、王子は無言でゴミ箱に捨てようとする。

「ちょ、何してンスか!」

 捨てようとした手をピタリと止めて、チロリとこちらを伺っている。

「それ、どういう意味ッスか、王子?」
「仕方がないよ、タッツミーの指示だもん?」
「そんな可愛い言い方したって誤魔化せません!説明してくださいよ。それ、なんて書いてあったんですか?」
「……ミッションが完了するまで、お休みだって」
「ミッションってだから何が、痛ってぇ」

 無理矢理起きようとすると痛みが走って、すると王子がこっちに来た。

「だ、大丈夫ですって。んな顔しないでくださいよ」

 その一言で心配顔は、憮然とした顔に変わっていく。ねじれた王子に腹は立っても、俺は彼にはこうでいて欲しい。優しすぎる王子の優しさ、それもまた俺は好きだけれど、ふてぶてしいくらいが似合っているなとそんな風にも思うから。

「見せてくださいよ。ミッション?取材じゃなくて、指示なんですか?」

 しらっとした表情を浮かべて王子は、カサカサと中身を再び取り出す。

「きったない字だよね、タッツミーって」
「いいから!ほら、かしてくださいよ!」
「“仲直りしたら戻っておいで”って」

 無理矢理紙をひっつかんでみれば、論旨が微妙に異なる文章が書いてあった。

「……これのどこが“仲直りしたら”ですか?反省文書いてくるまで自宅謹慎だって、俺全然関係ないじゃないですか!」

 王子は俺の話をまるで無視して、淡々と自分本位に話を始める。

「タッツミーってホント目ざといよね。ボクがザッキーにパス出してるの見て、いい加減にしろってさ」

 王子のプレイスタイルが何だか少し変わった気がしたのは自分の勘違いではなかったわけだ。達海さんもそれに気付き、今の話で王子もまたかなり自覚的な事だったのだと理解する。

「そっか、あんたヘソ曲げてたのバレて達海さんに怒られたンスね」
「……」
「なんかいつもと違うなって思ったら。そうか、嫌がらせしてたんスか」

 王子は俺に持ってきたはずのミネラルウォーターをチビチビと舐めるように飲んでいる。

「……最初に気付かれた日、このままだったら干すって言われたよ。あの人手厳しいからね」
「それっていつの」
「馬鹿だな決まってるだろ?」

 あの日の直後だよ、と王子は言った。

「あの人そういうとこめっちゃデジタルだからね。言うからにはやるなーって思ったよ」
「思ってて?王子、だってあれからあんたはずっと」
「うん。で、とうとう今日、実際帰されたよね。全然改善みられないからって」
「なんでそんな……」
「まあ、大人しくタッツミーの言う事きくかわりに、この際暫くどこかに遊びに出ちゃおうかなんて思ってた」
「王子!違う!あんた達海さんの話、一体何だと思って」
「怒った?」
「当たり前でしょう?やんなきゃいけない事、逆じゃないですか、なんで?本気で干されるってわかっててどうしてそんな」
「別にいいじゃないか。どうせタッツミーだって遊び出掛けるならせめて国内程度にしとけよ、くらいなものさ。そんな大した話では」
「……」
「ま、キミには大した話か。嫌いだもんね、こういうの」
「あんたプロなんですよ?個人的な問題を仕事に持ち込んで、俺、王子がそんな人だったなんて思った事一度も!なんでそんな変なとこで変な意地張らないといけないんですか?頭おかしいのか?」
「意地張って?そんな事ボクいつ言った?」
「だって王子は」
「ねぇ、いつ、あれを故意だと?ボク、そんな事キミに言った?」

 その一言でハッとする。確かに王子は言っていない。では、わざとではない?その意味は?ズシリとした重さが体を襲う。今俺は王子に何をした?
「王子……」
「……ま、わざとなんだけどね。キミ生意気なんだよ」
「……」

 申し訳ないと思った拍子に、王子はこんな事を言い出してしまう。いつもは腹が立つこの言い分に、今日の俺は傷付いてしまう。

「わざとじゃないほうが、良かった?」

 すると優しい口調になって、王子はひっそりとこう告げる。

「でも……わざとにしといて。その方が楽だ」
(楽?)

 傷付くよりも何よりも、彼の気持ちが知りたかった。一体王子は何を思い、何を見ながら生きているのか。楽とはどこにかかる言葉なのか。楽になるのは誰なのか?
「わざとじゃ、ないんですか?」

 おずおずとそんな言葉を発して、けれど彼は逃げ出してしまう。

「ハハハ!キミすぐなんでも真に受けるね。わざとだって言ったじゃないか。聞いてなかったの?」

 王子はとても器用に論旨を曲げて、俺を小道に誘い込む。これは彼の癖なのだろうか?とても、とても、疲れてしまうこの現象を、引き起こしているのは俺なのか。

「そういうの、やめてください」
「冗談を?うーん、その注文はどうかなー?だってさぁ」
「違います。そうじゃなくて、やめて欲しいって言うのはそういう誤魔化しです。だってあんた、それ冗談のつもりでやってるわけじゃないでしょう?」

 そう言えば、ほらもう、王子は黙ってしまう。これもまた彼の一つの小道かとも思ってもみたが、俺は直観しかもう指針がなかった。王子はどんなか目を凝らしながら必死になってそれを探す。俺といつも話をする時、その時彼は何をした?
「俺が疑ったからか?本当は故意じゃないんだ。そうでしょう?最初にあんたはそう言って、なのに俺が決めつけたから?信じないで、俺が王子を間違えたから?」
「……」
「故意じゃないけど故意だって言って?それじゃ全然解決にならないでしょう?誤解を誘って、楽だって、一人で真実を丸抱えにして、そんなの明らかに」
「本当の事に何の意味がある?別にふざけてるわけでもないって事がどれだけ重要?解決しにくいトラブルの方が全体から見れば厄介じゃないか。そんなの誰も得しない」
「でも」
「キミは現に損してる。こんな事を知ってしまって、ほらそんなにも辛くなった。やっぱりいらないでしょ、本当の事」
「俺は……」
「ボク達は物事に対する対処方法の形があまりにも違う。価値観?なんていうのかわからないけれど」

 損をしていると言った通りに、今は自戒が俺を責めて、それを見る王子のその目がとても悲しいものになった。

「しょうがない事さ。悪気はなくても噛み合わなくて、でも苦労するのはいつもキミで、傷付くのも必ずキミの方で。苦しむキミはボクを変えようとする。本当が欲しいってキミは言って、それじゃ駄目なんだって厄介な事をボクに言う。ボクは結果が全てで本当なんてどうでもいい事だと思っているんだ。ボク達は互いを否定し合ってる。互いに悪気はないのはそうなんだ、でもボク達これでは堂々巡りで」

 楽だとか厄介だとか損とか得とか、彼の言葉のその裏側に、王子独特のあの繊細な優しい心遣いが垣間見えた。

「振り回すのは、振り回されるのは……とかなんとか。あの日ついとても面倒くさい事を思っちゃったんだよ。ボク達どうにも噛み合わない。どうしようも、ないってそんな事から、別にボクにはどうでもいい事だ。理解なんてし合えなくていいと思うし、漠然とでも気持ちさえ繋がっていればそれで十分!恋人気取りが自分だけだって、キミが気持ちから逃げ出したって、だけど……」

 結果が全てと王子は言って、彼の中の結果といえば互いに理解し合えないという事だった。

「だけど、理解が必要なキミはそれに耐えられない……ボクの勝手に耐えられない。なのにキミは毒されてしまう。キミはキミらしくなくなっていく。ボクに感化されてしまうんだ。そんな事をボクは考えてしまって……」

 二人の価値観が違うと言う。違う事を彼は認知し肯定をして、それに俺が傷付くと言う。確かにそれは現実に今起きていた。俺は王子の論理をちっとも肯定出来ないし、寧ろそういう王子の考え方に彼の言う通り傷付いた。見ているモノが全然違う。そんな二人が一緒に居たとして、そこに一体何がある?人間は歩み寄って然るべきで、最善を尽くして努力すべきだ。

「やっぱり本当なんていらないよザッキー。そう思う」
「……」
「ボクはキミがそんな顔するの、わかってた。ボクの論理はキミの心をこんなにもざっくり傷付けるから」
「王子……」
「……そしたらもう……ボクが先に駄目になってた。見えていたものが全部消えて、キミの個性を全く使いこなせなくなった」
「え?そんな、違う、何言ってるんですか、俺、」
「キミが気付かないはずないよね?あれは連携じゃない。一人一人で勝手にプレイしていただけだ。無難に。キミとの繋がりが消えちゃったからだ」

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