俺と王子と情熱と
時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。
Adventus 23
おそらくイタリア語の書籍やドラマチックな映画の中にほんのり彼の心を動かす何かがあったのだろう。王子の口許にふわりと微笑が浮かんでは消える。けれど、笑みの理由を一つも理解出来ない俺はいつも通り彼とテレビの両方に視線を泳がせながら益々困惑するばかりだ。
(あ、また……)
それは気が付けばもう何度目かの彼の笑みで、彼が楽しそうに今この時間を過ごしている事が感じられる。俺の傍に座りながら、俺のあずかり知らぬ世界の中で、どこか遠く歌うが如く遊んでいるのだろう。
(せっかく……せっかく久しぶりに二人で一緒にいるのに……王子、今何考えてる?俺がここに居るのに、全くそんな事お構いなしなのかよ)
とうとう思いが飲み込み切れなくなって俺はこうして彼に問うた。
「……何がそんなに可笑しいんですか?」
「ん?何が?」
ようやく顔を上げてこちらに目を向ける王子に動揺しながら俺は答える。
「今、笑っていたでしょう?」
「そう?……全然気付かなかった」
「気が付かなかったって、またそんな……」
明るい笑顔はよく見慣れたそれで、先程の物思う王子のあの匂い立つような美しい微笑とはまるで違うものだった。
彼のあの誰に見せるためでもない彼の為だけの微笑みは、本当に彼が寛ぐこの家の中でしか出現しない。それはひどく脆くてあやふやで、なのに馬鹿な俺は見つける度に思わずそれに触れてみたくて、こうして彼のシャボン玉を割ってしまうのだ。今日もまた彼はいつものように、何の話をしているのだとでも言わんばかりに、笑って俺を誤魔化してしまう。中身なんて空気しか入っていないよ、と軽やかに嘯きはじめる。
「ところでキミは何故そんな顔をしているの?」
「そんな?」
「なんか、つまらないって感じ?」
そしていつもニッコリ笑って、こうしてザクリと指摘する。彼の心に触れたい、そう思う度寧ろ反対に、俺は彼にあっけなく己の心を暴かれてしまう。
「退屈?」
俺は王子が好きなのに、こうして彼に見つめられるのはとても苦手だ。それはつまり俺があまりにも彼に心酔している事に起因する。優しげな表情、優しげな口調。けれどその真意は?王子が奥の奥まで繁々覗き込んで、そこに弄ぶ種を見つけて俺を玩具にする姿は、日頃よく口が悪いと言われる俺すら比べ物にならない程残忍だ。ドキドキと戸惑いながら目を泳がせていると王子がクスリと笑ってこう言った。
「あぁ……そうだったね。キミがそんな風にしてるからボク、つい忘れて」
「つい?」
「うん、失礼?ザッキー」
中途半端に省略された言葉を一つ、王子は首を竦めて、再び本に目を落としてしまう。いつもだ。いつも、いつも。俺の心は丸裸にされてしまって、彼の気分次第に、弄ばれたり放り出されたり。
そんな今日の彼は、書籍と、映画と、そんなものにまるで夢中で、どうやら俺とはあまり遊ぶ気がないようだ。
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