俺と王子と情熱と
時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。
Felice Anno Nuovo! 04
「バレないように頑張ったけど、相手はタッツミーなんだもん。キミのゴールやアシストのデータを無理矢理積み上げてみせたところで、そんな目眩ましでは全然誤魔化し切れなかった」
変化してしまった王子の感覚が俺のプレイを戸惑せ、感覚が狂い始めた俺に合わせて王子が調整をしていたらしい。下方向に合わせあう悪循環の中で、逆説的に形ばかりの結果が出続け、それを達海さんは全部見抜いて、王子は窮地に立たされた。
「戦えない選手はいらない。悪影響が周りに出るようなら尚更ね。当たり前の事だ」
「俺、全然そんな事……」
「キミに気付かれたならもっと最悪。そういうんじゃ駄目なんだよ、ボクはね」
「王子……」
「キミはトラブルに遭遇した時は物事を突き詰めて考えるタイプだろう?けど、ボクは違うんだ。入れ込み過ぎると碌な事が起きない。アプローチは全く逆で、ボクはボクを解放してトラブルを相対的に矮小化させるんだ」
「?」
「つまり、リフレッシュ?環境を変えて、新しいものを見聞きして、深呼吸して?」
「バカンス……」
「そう。沢山のものに触れて回って、溢れる事で空っぽになる。満たされた中で直視できない飢えを見出す。本当に欲しいものは?どうしても埋まらない渇望の源は?そうやって遠く遠く距離を置いて、ボクは戦いたいってメンタリティを取り戻す。それがボクのピッチに立つための必要不可欠な準備なんだよ」
「し、知りませんでした」
「当然さ。こんな大切な事、絶対に誰にも教えない」
誰にも教えないと、俺に教える。
「おまじないって知られるだけで効力が薄まるんだ。そうは思わない?」
冷徹な目線で自己分析をしてみせては、まるで子供のような事を言う。
どこまで本気で、どこまで嘘か。でも少し王子の在り方というのが、このおまじないの一言に詰まっている気がした。これは彼を支えるジンクスの一つで、おそらくは誰にも教えないと言ったバカンスの秘密自体よりも、彼にそういうおまじないの存在があると言う吐露自体がキーなのだ。
「……馬鹿げてるだろ?近い距離からの干渉が増えるとボクは小さい調整一つにしても苦しむんだ。取材一つにも準備がいる。それを完璧にこなす為には」
付け足される言葉の陰に、例のあの観察の目。これは彼との知恵比べだ。わかるようでわからない。わかりにくいのに端的だ。巧妙に言葉を混ぜ合わせてミスリードを誘い、彼は自由に会話する。一言一言に対する相手の反応を見つつ、まるで戦うように遊んでいる。
「真面目なんですね」
やや眉を顰めるその反応は、上手に彼の興を誘った、そんな確かな証でもある。
「真面目?」
「はい」
「なんでそうなるの?」
「だってそういう説明してたんでしょ?ふざけてるわけじゃないって自分で言った。誤解されやすいけど王子は王子なりに一生懸命やってるんだって、そういう説明を今俺に」
「……」
「そんなにも王子はデリケートなのに、俺なんかの為にこんなにも誠実に説明してくれる。王子はいつも俺に真面目で、ややこしくなるのは全部俺があんたの論旨をことごとく間違え続けてしまうからだ。あんたはそれに疲れてる。うんざりだって、俺に言う」
「……」
「でも、こうやって付き合ってくれる、飽きもせず。だから」
「だから?」
「だから俺、よっぽど愛されてるンスね、王子に」
王子はとても複雑な表情を浮かべ、あれ?そんな話だった?なんてキスをする。
「ちょ……また、誤魔化し……」
その時王子はコップを片手に、とても器用に絡みついて、俺は揺れる水面にハラハラしながら、あっという間に夢心地。
「おやおや」
ヘナヘナと力が抜け落ちていく。後ろに倒れ込んで、足を絡めて、それは当然無意識の所作で、真っ白になった頭の中で楽しげな王子の笑顔を見つける。
「元気だね。まだしたいの?」
間接照明が水に弾かれ、キラキラ光って乱反射する。眩んで思わず目を細めれば、それに気付いて王子が言う。
「ハハ、忘れてた。これ、欲しかったんだっけね?」
残る水溶のその全てを、王子は口に含んで俺にくれる。それは物足りない程に僅かずつで、俺は吸いつくようにそれを欲した。追い求めて追い求めて、やがては彼の口の中まで、舌先で舐めまわしてはそれを飲んで、それでも渇きは癒えなかった。
「ザッキーってやっぱりエッチだ」
もう欲しかったのは水でもなくて、ようやく彼の熱い舌先が俺の唇を舐めてきた時、俺は小さくそれを唱える。
「好き、です。王子」
それはやはり、もっと、の合図で、王子が優しく俺を満たしていく。
「す……」
「うん、そう。それだけでいいんだと思うよ?今は」
「王子」
「言って?もっと」
王子は好きとだけ言えと言った。これはまた一つのおまじないで、きっと俺達の間を繋げるためには、今はこうする他ないのだろう。そんな事を思ってみれば、返事をするように王子が言う。
「お互いとっても不器用だからね。シンプルなところからが一番さ。そう思わない?」
ややこしい事は全部ナシで、互いを満たし合いながら俺達、そうやって少しずつ知っていく。それは過多な情報に溺れる二人の、多大な情熱の昇華法。互いが互いをこんなに狂わす、悪しき関係の浄化法だ。
「……不器用って何がですか?」
と俺が問えば、
「それを言わすの?勘弁してよ」
と返事をする。
「?」
そして、王子はクシャリと苦笑しながら、優しくキスして囁いた。
「……ボクはこんなにもキミが好き」
(あ……)
「そういう事だよ、知ってるくせに」
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