お花結び

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俺と王子と情熱と

時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。

        ジノザキ

Adventus 21

 俺にとっての意味の薄い映画を消して、前にも増して退屈になった。つまり時間の流れがのろ過ぎる。

(暇だ……ったく、ここで一人で一体何してろっていうんだよ。二人で居る時携帯いじるのとかめっちゃ嫌がるしなぁ、この人)

 実はこの退屈を凌ぐ方法は一つあって、けれど俺はそれをやりたくなかった。息をひそめて彼を観察する変質的な俺の気配を、当の本人には気取られたくないからだ。でも、こうして沈黙の時間が続けばどうしてもそんな風になっていってしまう事だろう。そうして書籍に埋没する王子がたび重なる俺のちょっかいの気配を察知し、いよいよ俺を邪魔に思うのだ。そうなってしまっては、こうしてやんわりと居ないものとして扱われるよりもっと最悪。

 イラついた俺はリモコン片手に録画のストックを選び始めた。見つけたのは昨日もう家で見てきたサッカー番組。別にみる必要もない既知のものを、それでも暇つぶしの為に見る事にする。そうでもしなければ間がもたない。

 けれど、その再生が始まった途端、王子がピシャリとこう言った。

「何勝手な事やってるの?」

 突然凍り付くような冷たい口調でゾクリと室温低下を体感した。これは先ほどと違って王子が本気で不機嫌になった証拠だった。横を向くとやはり彼が俺の事を刺すような鋭い目線で見つめている。

「駄目だよ?ザッキー」

 怯んだ拍子にガバリと迫まられ、リモコンを持つ手をつかまれた。その険相に俺が最早身動き一つとれもしないのをいい事に、

「それ貸して」

王子は掴んだ手とは逆の手であっさりと俺からリモコンをひったくる。そして流れる動作そのままの仕草で、王子は華麗にテレビを消した。

「あッ……王子、なんで!」
「なんで?なんででもだよ。当然だろう?」

 まだ彼に手をとられたままの俺はドキドキとして、乱暴に苦情を叩きつけながらも心理的には後ずさる。

「何なんだあんた!意味わかんないンスよ!さっきから!」

 氷のように怒っていた王子がそんな俺を見ながら高慢に笑って、とどのつまり俺には彼がまるで理解することが出来なかった。とにもかくにも気になるのはその彼の印象的なその瞳。先程からの穏やかさなど嘘のような、ジッと見つめる、突き刺さるような彼の目が痛い。

「や、やめてくださいよ、そういう」
「そういうって、どういう?」
「……」

 “そんな目をして俺を見るな”、でもその一言が返せない。ではどんな目をすれば?と問われた瞬間、それにも返す言葉がないからだ。一人微笑むあの優雅さのまま、包む様に笑いかけて欲しいなどと、一体どんな顔して願えばいい?
「なんか文句でも?」

 詰め寄る王子に言葉を探す。何もおかしなことはやっていない、わかっているのに分が悪い。だから結局今から口にするのはしどろもどろな言い訳のようなものになるしかなかった。

「だって……い、今の、理不尽デショ?俺はただ」
「理不尽?」
「王子返事しねぇし、テレビでもついてなきゃ……」
「消したのはキミでしょ」
「あれは、その」
「ボクがつけたものを勝手に消して、無断で自分の好きなのつけて。そういう時は何がしかボクに対して一言があって然るべきと思うんだけど?」
「……」
「違う?」

 ホンの数ミリ眉が寄せられるだけで、耐えられなくて目を逸らす。王子の目は優しげな形をしていて、なのに時々こんなにも凶暴だ。

「たかが、テレビの……そんなの、別に大した事じゃな……」

 キツイ目付きと自認している俺の目だけど、今はこんなにも情けない。惨めな今の俺の姿は、彼の目にはどう見える?怒れる王子は次第に無口で、沈黙の隙間を埋めるが如く、ポソポソと俺の考えなしの言葉が連なる。

「なのに王子は大人げなくて、そんな風にめっちゃ怒って、」
「……」
「理不尽以外の何ものでも……だから俺は……だから俺はいっつも困惑するばかりで……」
「何?」
「そういうの、面倒っつーか、キツイっつーか、」

 知らぬうちに俺が何かを王子にしでかしたのは確かな事で、けれど俺にはそれが何だかわからない。楽しく時を過ごしたくて来て、イラつきばかりが増えていく。二人の時間の理想と現実、その違いがこんなにも晒され俺はその事実に耐えられない。
 素っ気ない彼といるのは寂しい。けれどこうして俺と話す王子は、とても怖い。

「意味不明な気分屋と居るのはマジでなんつーか……」

 ドンドン頭が真っ白になっていくのは、何もかも見透かすその目が怖いから。

「待ってよ、気分屋はキミの方じゃないか」

 ドンドン目の前が真っ暗になっていくのは、思いがけない言葉が怖いから。

 
「ま、ボクはキミの事、面倒くさいともキツイとも思った事なんてないんだけどね」

 失言が失言を呼ぶこの俺に対して、悪いのは誰?と問う彼の姿がさも真っ当なものに見えるから。

「なのにザッキーはそんな風な事をボクに言うの?随分冷たい子なんだね。ガッカリだよ」

 彼と目を見て話せばこうして、理不尽なのは俺の方だと、そんな暗示にかかるからだ。

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