お花結び

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俺と王子と情熱と

時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。

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Adventus 20

「ちょ、そうやって人の事を物みたいに扱うのやめてくださいよ」

 つかまれていた手を引っ張られて、これは王子の俺に対する向き直れの合図。腕に力を込めて抵抗してみれば、彼の手は簡単にスルリと外れてしまった。気迫にドキリとした分だけ、この肩透かしに異様な心細さを感じてしまう。その事に少し戸惑いながらも、俺は再び減らず口。それは勿論、傷付くこの心を隠す為。

「こっち向けって……く、口で言えばわかる事なんだから」

 いつもそうだ。ヘソを曲げた俺に向かって力づく且つ問答無用。一瞬そんな風になるようでいながら結局、こうして『あぁ、そうかい』と言わんばかりに王子はサラリと軽くいなす。飼い犬の反逆に大きく腹を立てると思わせながら、その実どうでもいい事のように流すばかりだ。

 こんな時の彼の気のない表情はいつにも増してわからない。必ず俺の目が彼の顔から逸れているので、見ていられるのは彼の服や彼の手なんかばかり。“男の魅力は手に現れる”、そんな戯言が脳裏に浮かぶ度に、また自分が王子の手を見つめている事実に気付かされる。

(ついさっき俺の手を掴んでいたの、これなのか。これが……)

 指が長く優雅でいながら骨格しっかり節が雄々しく、浮き立つその血脈の這い方ですら完璧だ。長袖を好む王子が見え隠れさせているその手首の内側の白さは、なんだかいけないもののよう。こうして手を見るその度毎に、もう少し見えやしないモノかと目が離せない。珍しいものでもないはずなのに、秘する王子が悪いのだ。

「キミさ、今日はなんか妙に……」
「何スか?」
「いや、なんでも」
「んだよ」

 引っかかる物言いにふと顔を上げると、彼はやはり目を合わせた瞬間に俺の全てを丸裸にした。何の表情も持たないそれが、一切の思考を隠してジッとこちらを見つめている。俺の心の中のデリケートな部分にあっという間にたどり着いてしまう王子と居ると、時々こうしてぞっとする。

(う、やべ……)

 減らず口しか叩けない俺の姿に『キミ面倒くさい、もう帰れば?』なんて彼が言い出しかねない気までし始める。意味のない言葉を吐き出しながら尻尾を丸めて後ずさる俺は、彼の目の前でこんなにも惨めだ。
 先程自ら乱暴に振りほどいた彼の手が空を彷徨っている。俺はその行先の動向を目で探った。捻くれた態度などしなければいいのに、なんで俺はいつもいつも、と、後悔、切なさ、心細さのあまり心が震える。

 けれど。

「全くキミって子は」

 柔和な表情とともに俺に差し伸べるその指先には、王子独特の巧みな心遣いが内在していた。王子の声にはえも言われぬ艶が乗っていたので、俺はあの瞬間が来ることを察知する。

(あぁ、王子)

 やんわりとした手つきで彼が俺の髪に触れた瞬間、その快感にザワリと小さく身震いをする。不安な心に安堵が巡り、ポ、と仄かに熱が灯る。簡単に懐柔される悔しさと恥ずかしさ。でもその実俺は彼によるこれがとても好きだった。
 何事もどうでもいいような顔をするとりとめのない男が今、俺の不機嫌を消し飛ばそうと、そのおぼろげな正体をのぞかせる気がするからだ。

(やっと本当の意味で俺をちゃんと意識してくれた……)

 それほどまでに彼のよく手入れされた指先は饒舌だった。

「まるで躾の足らない子供みたいに扱いにくいったら」
「お、俺は子供なんかじゃ……」
「子供だよ。退屈でボクにかまって欲しがっては、そんな風に癇癪を起す」

 俺の内部を抉る言葉はいつも鋭く、けれどその指先はこんな風にとてもソフトだ。だから俺は心を見透かされる不快に身構えるのに、その心地よさにグズグズと崩れ落ちてしまう他なかった。

 かまってかまって、そんな風にひっくり返って泣く子供の口に、王子がポコリと丸い飴玉一つ。こんな子供だましをと腐しながらも、俺は何度も彼特製の甘いその味に簡単に絆されてしまうのだった。

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