お花結び

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俺と王子と情熱と

時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。

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Adventus 18

「ややこしい?ボクが?」

 思わず漏れるその笑みもまた嫌味なくらいに絵になって、その事一つでイライラが募る。

「えぇ、王子ってややこしいッス」
「そう?」
「そうですよ!」
「何故?シンプルじゃない?」
「どこが……」
「全部がだよ。ボクは自分にとても正直だ。そういうところ、美点のひとつだとさえ思ってる」
「何言ってンスか。王子の場合は単に自分の欲望に忠実なだけでしょ。そういうのは普通正直とは言わないッス。ったく、やる事なす事無茶苦茶でホントわかんねぇつーか面倒くさいっつーか」
「フフフ、全くキミは」
「なんスか」
「……」
「?」
「参ったなぁ」

 王子は目を伏せ、ゆっくりとした瞬き一つ。その口調は優しく穏やか、涼やかに聞き流す表情はいつもと変わらず、こんなやりとりもよくある話。なのにその光景には何故か僅かに違和感があった。

「王子?どうか、しましたか?」
(違う?なんだ?違和感じゃない、これは……嫌な予感?)

 その事を感知した瞬間王子は言った。

「キミはボクをちっともわかってくれない」
「え?」
「……いや、ちょっと違うか。わかってないんじゃない。わからないふりをするのが凄く上手なんだ」

 再び俺を見る王子のその目は筆舌に尽くしがたい凍える色で、咄嗟に俺は身を竦ませた。

「キミは本当に……狡い子だね」

 それが彼とのこの会話のマッチアップで、半歩のみならず完全に一歩遅れた瞬間だった。

「狡いとか、わからないふりとか、」
「……」
「なんで俺王子にそんな事言われなきゃならな……」
「なんで?それはボクが今ひどく焦れてるからだよ」
「焦れ、て……?」
「うん、そう。ボク焦れてるの。フフフ」

 俺は禁忌に触れたのだろうか?穏やかに笑いながらもまるでいつもと違う王子の気配に俺はゾワリとした何かを感じた。そしてオロオロと手立てもないまま闇雲に彷徨うこの動揺が、王子と俺の間に悪循環を生み始める。

「いや、だって王子、そんな……俺は、」
「駆け引きもある程度はいいもんだけど、やり過ぎはちょっとね」

 とりとめのない半ばいい加減ないつもの気配が消えて、散漫さの欠片もないとげとげしいまでの存在感が数十センチ先に現れた。これは紛れもなくキッカーとしてピッチに立った時と同じ、その場にいる者全てを黙らせる驚異的な緊張と集中の極みの姿だった。気圧されるとは、まさにこの事。俺は王子の変異に身を竦め息を潜め、ただひたすら小さく小さくソファに座る。

「やり過ぎって」
「なんかもううんざり。だから、ザッキー、もうこういうの、やめよっか」

 たった一言、それだけの事で、来たるべき最後の通告が始まったのだと実感した。

「やめようって、あの、」
「うるさい。少しは黙ってボクの話、聞きなよ」

 王子の様子がガラリと変わった。蛇に睨まれた蛙のように、吐息一つも憚られる。彼の怒り(悲しみ?)は情熱にも似て、大きな恐怖と仄かな喜びに身悶える。そう、俺はやはり彼の言うようにかまわれたがりの子供だから。

(あぁ、駄目だ……喜んでる場合じゃ……王子は本気だ。本気で俺を捨てようと?……やめるって、きっとそういう……)

 そしてこの後王子の手により、俺はあまりにも鮮やかに敗北を期する事になる。

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