お花結び

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俺と王子と情熱と

時々ジーノの家に遊びに来る程度のまだ出来てないジノ→←ザキ。なんちゃってアドベントとしてクリスマスに向けて連載やりました。しかし予定が狂って年末まではみ出してしまった……「私の書くジノザキから連想した文章」を書いていただいたので、それをベースにスタートしました。

        ジノザキ

Adventus 17

 緊迫した空気の中、竦む俺に王子が言った。

「ともかくボクがこの家にキミを呼ぶのは二人で甘い時を過ごしたいからなわけ」
(……え?今なんつった?)

 出ていけと見限りの言葉を覚悟する俺は、考えてもみなかった王子の発言を受けて咄嗟に意味を咀嚼する事が出来なかった。

「つまり思う存分キミを独り占めして、大好きなキミの事うんと堪能したいからなの」
「待っ!何を急に」
「ああ、またそうやって逃げ出して」
「いやだから待てってッ!王子、いきなりあんた一体何言ってんだ!」

 あまりの直球の言葉に俺は頭がグルグルし始めていた。けれどそんな俺を無視してドンドン、王子は物怖じしないそのメンタリティをもって更に好き勝手な言葉を連ねる。

「何って……そこまで言わせるつもり?つまりね?ボクはキミの事が可愛くてしょうがないから、手を繋いだり、ギュって抱きしめたり、キスとかもしたいの」

 何かを言い返そうとするのに、王子の言葉はあまりに滑らかトントン拍子。口を挟む隙間がまるでない。

「ザッキー?もっと言う?」

 呆然とする俺に向かって不埒な発言はドンドン拍車をかけていく。

「キスして、触って、キミのその服も全部剥いで、そうやって一晩中キミを抱いて感じたい。ベッドの中で舐めて、噛んで、二人で無我夢中にお互いがお互いを。そんな風に思いっきり求め合って埋め合って、何回も何回もボク達一緒に、気持ちよくって溶けちゃう位に」

「やめろって!」

 やっとの思いで悲鳴のように。叫んで、体を丸めて、耳を覆い。咄嗟に全身で拒絶をすると、塞いだはずの耳の向こうから淡々とした王子の声がやってくる。

「……ま、そうなるよね。知ってた」
「あ、当たり前だ、何だよ突然……ふざけた事いってんじゃねぇよ」

 チクチクする程総毛立って、腕や腿まで痛かった。吃驚するくらい鼓動が激しい。

「どうして?別にふざけてないけど」
「ふざけてますよ!」
「まあ確かにこんな事を逐一具体的に説明するのも変だけどさ」
「全くだよ!」
「何故そういう反応になるの?ボク達互いに惹かれあってる。そうでしょう?恋人同士なんだもの多かれ少なかれそういう気持ちがあるなんて事は別に普通の話じゃないか」
「いつから俺ら恋人同士になったっていうんですか!」
「いつから?失礼だなぁ、そんな言い方。ずっと前からそうじゃないか。じゃなかったらなんでオフ毎に当たり前の様にボク達会ったりしてるわけ?」
「知らねぇよ、そんな事!」
「もう、ムードぶち壊しもいいところ。もうそういうのはやめようよ、いい加減ボク飽きちゃった」
「飽きちゃったって何がだよ……支離滅裂すぎて意味わかんねぇ」
「どうせキミだって同じだろう?大好きなボクと二人っきりなんだよ?一緒に居たら、したくならない?」
「ならねぇよ!」
「素直に認めなよザッキー、そしたら随分楽になれるのに」
「違う!楽になるも何も、あんたとそんな事やりたいなんて俺は一度も!」
「またそんな事。嘘つき」
「嘘じゃない!自意識過剰だ!」

 彼が何をし始めたのか、ようやくこの段階で理解した。彼は日頃から物事を疑似恋愛的に摸する遊び(恋人ごっこ)がとても好きで、今もまさに続いていて。単なる言葉遊びに飽き飽きした彼が、今日はセックスすら遊び道具に追加したのだ。

「いくらなんでも……悪趣味すぎる。俺は確かに王子の事好きだけど、そういうんじゃない。それはあんただって十二分にわかってる事だ」
「……」
「すぐ、王子はそうやって……やっぱり狡いのはそっちじゃないか」

 自分の中にあるこのふしだらな性欲は、才ある王子に惹かれ過ぎてしまった俺の心の誤作動だった。だからこそ彼はその発動が面白おかしく、こうして俺を弄ぶのをとても好んだ。

「ホント、マジで王子、仮にも俺らチームメイトなんだから……あんまり気持ち悪い事言わないでください」
「ザッキー、その言い方はさすがにひどいよ、ボクは」
「あんたはなんでも平気なんだろうけど、ちょっとくらいは相手の事とか、後先とか、そういう事ちゃんと考えてもいいんじゃないッスかね」
「ボクがキミの事を考えていないと?」
「そうですよ。こんなやり方、フェアじゃない。今はそれでもいいかもしんねぇけど、人間関係大事にする事覚えないと、そのうち誰もあんたの事なんて相手にしなくなりますよ?」
「……」
「いや、あの……王子が悪気がないのはわかってるけど。でも、世の中にはどんだけ親しい間柄でもやっていい事と悪い事ってあるんですよ、王子」

「ボクはフェアじゃない?」
「そうです」
「どこが?」
「どこがって、全部がです」
「キミがじゃなくて?」
「何言ってんですか、違いますよ」

「ザッキー、キミは激しく矛盾している」
「矛盾って何が」
「そんなにもボクが好きなくせしてボクの気持ちを信じない」
「……ッ」
「何度も伝えてきたはずだよ?ボクはキミが好き。本当はちゃんとわかっているんだよね?」

 信じぬ心を責められながら、真偽のわからぬ愛の囁きを降り注がれる。俺は目の前に美味しそうな人参をぶら下げられて、食べたい心、逃げたい心、俺の心が裂けていく。

「ボクには矛盾がないよ?一貫してる。キミはボクが好きで、ボクもキミが好き。キミの気持ちもボクの気持ちも、その両方を信じてる。だったらどうなるのが自然?ボク、何か変かい?」
「だから、俺の好きはあんたの言うような好きじゃなくて」
「簡単に素直になれないのはわかるけれど、やっぱり不毛だよ、そういうの。非常にキミらしいとは思うけどね」

 この夜の彼はいつにも増して甘く優しい笑顔を浮かべ、それを見て俺はとても残酷な人だと心から思った。

「ザッキー、不毛なんだよ」

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