犬の俺だってわかる事
特殊設定閲覧注意。お題文から始まる後天性人化(黒)わんこ崎です。三次創作を完全に勢いのままに……はるさん許可ありがとうございます!(三次創作と言いながらも完全にパラレルで犬な崎なところだけが同じですしキャラも崩壊しています)
相思相愛の独占欲
今なら王子の葛藤がわかる。あらゆる道義的なタブーを知る王子は、その境地にたどり着くまで、俺なんかよりも何十倍も悩んでいた事だろう。うなされ続けた熱が下がった頃、俺はそのまま人型でいて、犬と人、雄と男という、さまざまな条例(ルール)を二人で「せーの」で同時に違反して、ようやく俺達は交尾らしきものを行ったのだった。最初は互いに快感を吐き出し、痛くて辛くて要領も得ない、本当の意味での行為が完遂したのは、俺達二人がもう幾晩も夜を重ねた後の事だった。
そうして、あの日王子の交尾を見た瞬間から出来た俺の中の深い傷は、やっと同じものを得て消失を迎えた。苦しみの中で、俺は全ての意味を知った。俺はこの為だけに、自らが望んで人となったのだ。
「王子、王子、俺が一番?」
「うん、ザッキー、キミが一番だ」
「ずっと一緒に?」
「そうだよ」
「良かった!俺、一杯一杯お勉強して、」
「うん、そうだね、そうしてこれから一杯一杯、色んなところにお出掛けしよう?ザッキーキミの行きたいところは?」
「えー?なら、絶対あの芝生がいいッス!王子がいつも行ってるところ!」
「あー、それは……」
「王子?」
「うん、多分なんとかなるよきっと」
「やったー!俺、あそこで王子と一緒にボール遊びやりたい」
「じゃ、少し家で練習しようか?」
「マジで?大きいボールは家の中じゃ遊んじゃ駄目だっていつも」
「いいよ、上手にやれるようにキミ専用のを買ってきてあげる」
「信じらんねー、超嬉しい!」
「最初はそうだねー、」
「ワクワクする!」
「足の裏でコロコロする」
「楽しそうだ!」
「少し慣れたらねー」
「慣れたら?」
「あのね、」
「うん」
「それから……」
「待ち遠しいなー」
「ボクもだよ」
ハハハ、フフフ、と笑い合って。俺達二人そうした日々を、死が別つその瞬間まで一緒に過ごす誓いをたてた。これまでも当たり前の常識、願望でもない、言うまでもない、ただの現実の延長の事。それでも神を知らなかった俺が王子とそれを宣言した時、本当に自分が人間になれた、そんな気がした。これは二人だけの約束じゃない。神様も、神父様も、一緒に見ていてくれる、俺達の約束なのだから。
「俺達みたいな関係って、なんて言えばいいンスか?」
甘い一時を過ごした後で、ベッドで二人寝物語。
「同性同士の関係についての名称がこの日本ではとても少ないからねぇ」
「つがい?なら、恋人、であってますか?」
「うーん、そうだね。でももう少し近しいかな?異性同士なら恋人よりも夫婦だけど、英語で言うところの、パートナーかな?」
「パートナー?」
「不満かい?でも、恋人よりもずっと近い関係だよ?式も挙げたしね、戸籍がないから略式だけど。ボク達は今日結婚をして、ちゃんと本当の家族になったんだよ?」
「結婚?いつ?」
「神様にお約束をする事だよ?あれ?わかってなかったの?」
「あー」
「嬉しい?」
「……」
「ん?」
「王子、俺知ってます。結婚は雄と雌がするんでしょう?だからそういう意味では俺達、単なるそれの真似事で」
「ああ、正式な事を言い出すと法律上色々あるけれど。でも今日行った神様は、そんなケチな事を言う神様じゃないから大丈夫だよ?おかげでちょっと遠くて大変だった」
「なんでそんな事になっちゃうのかも、俺もう知ってるッス。家族には子供がつきものだからだ。だから男同士は結婚しない。俺達じゃ子供が出来ないから」
「待って?ザッキー、気を付けて?子供がいるから家族なんじゃないよ?知ってるでしょう?男女の夫婦でも子供を作らないで家族してるところもあるし、子供がいたからってそこに家族が出来るわけでもない」
「ん、そりゃそうッスけど……テレビだとそういうのが“一般的”とかいうんでしょう?」
「うーん、ちょっと難しい話だったかな?あれは良くないとボクも思ってる」
「何故?」
「えっとその辺はまあ少しずつさ。人の生き方にはいろんな形があって然るべきなんだとボクは思うよ?そりゃ可愛いキミの子供がどんななんだろうとか、見てみたい気もするけれど」
「……」
「どうしたの?また考え込んでしまって」
「……やです、そんなの」
「ん?聞こえないよ、もう少し大きな声で」
「俺、王子以外と交尾なんて……。嫌だ。絶対に」
王子の願いにノーを言う。それが怖くて首を竦め、耳を伏せながら俺が言う。すると王子は何故か笑って、ぺっちゃんこになった俺の耳をクシュクシュ撫でた。不意の事でドキリとすると、王子はそこに軽くキスして、そうしてヒソヒソと囁き出す。
「ゴメンね?冗談。キミが誰かとなんて、絶対ボクも許す気ないから」
そのまま軽く耳を食まれて、その甘噛みにゾクゾクする。唇と歯がするする降りて首元を、つまり急所を軽くまた噛まれた。王子は犬の生態をよく知り、丁寧な手法で服従を強いる。変な息が口から漏れて、グズグズと理性が崩れていく。
「こんな事、ボク以外の誰ともしちゃ駄目だよ?」
コクコクと震えるように俺は小さく小さく頷いていた。
「し、しねぇッスよ、あッ……」
今度は這い上がる舌先が俺を追い詰めるので、眩暈を誘うあの王子のキスから逃げるようにうつ伏せる。今度は背後からのしかかって、王子は出来なかったキスのかわりにスルスルと俺の尻尾に悪戯を始める。
「あ、駄目、尻尾……」
「もう倒れてるよ?」
「いじんなッ、やめ……」
尻尾は一番か弱い己の弱点を守るべきもの。けれど今はもうそれですら王子の手の中にあって、内側のふさつく毛を弄ばれて、俺は体がカタつき、震えのままに腰を突き出す。
「キミのこのあたり、凄く不思議。尻尾はこんなにふさふさなのに、お尻の肌は……」
「あ、くすぐった、い……尻尾、付け根クリクリ、しな、いで!」
「ん?嫌なの?ザッキー、やめて欲しい?」
そういってもう一度王子は耳を食んだ。伏せようにもその舌先が毛の薄い箇所を嬲り続けて、呆気ない程簡単な形で俺は降参する羽目になる。
「これするの好きでしょう?違ったっけ?」
「ん……ッ、」
「本当の交尾なんてした事もないのに。好きなんだよね?ボクにされるの」
きゅう、きゅう、と勝手に甘えた声が出る。そのところどころで、今度は人間としての嬌声も。
「あッ、」
王子はとてもとても人間なので、こちらの声を凄く好んだ。犬として俺に服従をさせて、人としての俺に愛撫を施す。俺は次第に人としての発情の証にキスをねだり、愛撫を乞い、王子が欲しくて腰を振った。
「だ、駄目、気持ちいい、王子ッ」
「上手だよ、ザッキー?すっごく素敵だ。ほら、もうこんな奥まで」
「あ!そこ、して、して!あ」
かつてあんなにこの行為を渋っていた王子が、今は全身で俺を堪能をしていた。交尾を願っていた俺はと言えば、想像していたよりも激しいその快楽に戸惑いをおぼえ、それに対する強い欲求を王子に煽られるその度に、獣であったはずの俺なのに、どうしようもなく獣な自分に戻っていく事が恥ずかしかった。
「ザッキー、本当にこれが好きだね。こうしてるとキミが獣だったんだなって思い出すよ」
人としても犬としても中途半端な俺の体は、動物としての欲情と、人間としての感受性を人一倍強く持つ事となった。薄いながらも残る体毛は前以上に王子の指と体温を敏感に察知し、未だ残る発情の周期が俺を性の奴隷にする。
(お、俺は人間だ……ちが、動物なんかじゃ……)
心には犬にはわからぬ背徳の知識。人化が進む程に理解する。罪深いこの行為の意味を、日に日に俺は体に刻む。そうする事でこの行為をする、本当の意味を知っていく。
(王子、もっと。俺も王子と同じになりたい)
彼に踏越えさせたその一線の意味を、その愛の強さを、知りたく思う。俺を抱く度に獣化の進む、そんな優しい人の為に。俺に“好き”をわからせる為に、今日も王子は俺と寝る。
「ザッキー、好きだよ?わかってくれる?」
「わ、わかん……な……」
今日も王子は愛を刻む。見えない内部、俺の深部に。
「わからないの?こんなにボクをキミにあげてるのに、足りないのかな」
「違、気持ちい……これ以上、おかしくな、いや……王子、」
「人であろうとするキミが、そうやって崩れていくのが好きなんだ。もっとキミは人でいてよ。そして犬のようにボクを呼んで?おかしくなって、噛み付くみたいに、必死で欲しいって名前を呼んで?」
言葉にならない歓喜の呻き。夢にまで見たこの瞬間。そうして記憶は繋がっていく。自分が人になった理由。
――王子、王子、俺のだ王子、俺だけが必要な人でいて欲しい
「犬のキミはうんと激しいのが好きなんだろう?理性が吹っ飛ぶほど体中欲望で一杯にして、ボクにもみくちゃにされながらイキたいんだよね?」
燃えるように体が熱い。
「ボク達本当にいけない事してる。人と犬の、男と雄の交尾だなんて。それがこんなにも気持ちがいいなんて、絶対に誰にも言えない秘密なんだよ」
「あ、あぁ!助け、て……」
「誰も助けになんか来ないよ?ザッキー?キミは今とても幸せなんだもの。そうでしょう?」
「う、うぅ、……!」
「幸せ?ザッキー、ボクに言って?」
「し、しあ……あぁ!」
「駄目だよ、ほら、ちゃんと言って?ボクと交尾、幸せなのかい?」
王子が知らずに口にした事。本当にその通り望んだ事だ。この罪は全部、俺の幸せ。俺を裏切る王子を知って、あの日から俺はこれを貰う事を強く望んだ。見えない部分についた傷を、王子は知らずに癒し続ける。
「幸せ?ザッキー、ボクとして」
「交尾、王子と交尾、しあわ……、んぅ!」
「気持ち、いい?ボクに犯されて」
そうして、俺は獣と化して、とうとう声とも呼べない歓喜を息絶え絶えに叫び出すのだった。
「キミの全部は、すみからすみまでボクのモノだよ?もう離さないから観念してね?」
王子の独占欲の強さは知っていた。好きなものほど、拘束したがる。
「ゴメンね?我慢が利かないんだ、もう、こんなにも」
王子はもう二度と、俺の巣立ちを願わないだろう。俺はとても幸せだった。
「ザッキー、キミが好きなんだよ、わかってくれる?本当なんだ」
他者からの独占欲を王子は嫌う。だから、これは墓場まで持って行く、俺だけの秘密。
(俺のだ王子、全部全部。もう裏切りは許さない。あんたは俺の虜になって、ずっと俺の傍に居るんだ)
[maroyaka_webclap]
