犬の俺だってわかる事
特殊設定閲覧注意。お題文から始まる後天性人化(黒)わんこ崎です。三次創作を完全に勢いのままに……はるさん許可ありがとうございます!(三次創作と言いながらも完全にパラレルで犬な崎なところだけが同じですしキャラも崩壊しています)
王子も芝生も大好きだ
俺は元の姿であった頃から、王子がしばしば見ていた芝生で駆け回るあの映像が好きだった。あれを見ている時の王子はいつにも増して魅力的な目になる。基本的にいつもご機嫌な人だったけれど、それでもその時だけは感情が高ぶるのか、俺を撫でる手に微細な力が入ったり汗ばんだり。俺はそれを感じながら少しずつ映像の意味を理解していくようになっていった。
(あそこでの“服”は目印なんだ。二つに分かれて戦いをする!それに、なんと時々王子そっくりな人間が画面の中にいたりもする!)
俺がそっくり人間を追ってテレビの前をうろうろすると、王子はその度にクスクスと嬉しそうに笑った。俺が人間になってからそっくり人間の不思議の話をしたら、あれボクだよ、と返事をしたので、王子ってこの世に二人いるのかと、俺はとても驚いた。すると王子はまた楽しそうに、クスクス、クスクス、録画という人間の能力を教えてくれた。その能力を王子が使って、これキミだよ、とテレビの中に俺そっくり人間を閉じ込めた時、その理屈を理解するのに随分と時間がかかったし、本当のところ今でもイマイチわかっていない。
俺は昔から王子と原っぱで遊ぶのが一番好きだ。今も同じにそう思うし、もっと言うならあそこで一緒にボールを追いかけれたら、どんなに楽しい事だろう?せっかく人間になったのならば、テレビの中のあの広い草原で俺は王子とあの遊びをやってみたい。
(王子の走ってるの、見たいな……王子も芝生もボールも……大好きだ……)
王子の事なら何時間見てても見飽きないのに、最近芝生を見せてはくれない。あれは見ていても楽しいだけで全然俺に必要なお勉強にならないらしく、王子は違う映像ばかりを再生する。王子の手の心地良さと退屈で、くあぁ、と欠伸をし始めると、王子は大きな大きな溜息をつく。
「退屈?」
なんとも言えない顔をする王子に、俺もなんとも言えない気持ちになる。
「ゴ、ゴメンナサイ」
俺がしょげると、王子はクシュクシュッと両手を使って俺の頭を掻いて、ニッコリ俺に笑いかけた。
「そんな顔しないで?」
多分、気落ちしかけた俺を慰めてくれたのだ。
「ほら、この先二人はフランスに旅行に行くんだけどね?そこ辺りでちゃんとキミの好きそうな場面も出てくるから」
「好きな?どんな?」
「それは見てのお楽しみ。驚くと思うよ?多分ああいうの、一回も見た事ないだろうからね?」
(王子、優しいなぁ……一応俺が少しでも興味持てるようにって、色々考えてくれてんだ?)
俺だって当然大好きな王子の期待に添いたい気持ちはある。でもあの芝生の映像に比べると、人間の交尾(この場合は単にラブロマンスの中にある程度の暗喩的な軽い表現)なんかに興味なんか持てはしないし、どう頑張っても全然面白く感じない。出掛けたり戻ってきたり、服を脱いだりまた着たり。
(せわしない……何から何まで、せわしない……)
大体やってるこの交尾(抱擁)。上足(手)がアチコチ、なんだか勝手が全然違う。
(興味がないっつーか、俺、これ嫌い。人間の交尾なんか見たくないし、なんつーか、何?下手?っつーか、おいおい、そうじゃないだろって。大体王子なんか俺の事可愛がってくれる時でさえ、あんなにうまい具合に……)
そんな事を思っていたら、体がザワリと震えてしまった。人間の交尾は見てはいけない。興味を持ってもいけない。必要以上にそういう行為に関心を示してはいけないのだと、在りもしない警報が頭の中でガンガン鳴った。急に心臓がズキリと痛んで、駄目だ、ヤバい、と目を瞑った。
(つまんないもんは目端で見る程度にして、気を逸らすんだ。それが一番)
あの時俺は沢山の約束(王子が言ってた、じょ、じょうれ?)を破った。だから、こんな目(人間化)にあうのもきっとその罰だと思っていた。
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