お花結び

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犬の俺だってわかる事

特殊設定閲覧注意。お題文から始まる後天性人化(黒)わんこ崎です。三次創作を完全に勢いのままに……はるさん許可ありがとうございます!(三次創作と言いながらも完全にパラレルで犬な崎なところだけが同じですしキャラも崩壊しています)

欠点ばかりの

 王子は犬の俺をそれはそれは可愛がってくれた。けれど、人間になってからというもの、俺に対する態度が変わってしまった。
 今でも帰宅すると暗がりで眠る俺の姿に「誰!?」って驚いたりなんかもするし、前みたいに顔を舐めようとすると人間同士はそんな事をしないと嫌がる様に押し退ける。それどころか俺から近づくと逃げているみたいな気配を感じる。
 そうして王子は今日もまた、変な映像をお勉強の為だからと延々俺に見ろと言う。
「王子、お帰り、お帰り」
「ただいま」
「……」
「ん?どうしたの、そんなに尻尾を振って」
靴を脱いだ王子の前に立ちふさがる様に居続ける俺。玄関先のハグをソワソワしながら待っていた俺に、今日も王子がチクリと言う。
「待ってザッキー、昨日までちゃんと出来てたのに。それはもう?」
「ナシ……?」
「はいお利口。じゃ、どいて?」
 そして、食後はそれの復習だ。
「ほら、見て?どの人間もそんな風にはしないだろう?人間同士は……」
「でも王子、昨日見てたのではやってたのに。あれ、お帰りの時の俺と王子みたいだった。ギューってして、クシュクシュして、俺もあんな風にしてもらいたい、王子」
「違う違う、あれは恋人同士だからだよ。恋人はいいんだあれで」
「……」
「昨日のじゃなくて、今見てるのをもう一度よく見て?ほら、この人達は全然そんな事してないよ?お帰りとただいまを言うだけだ。前にキミはちゃんとこれを理解出来ていたよね?」
留守の間に見ていたのは、ワイドショーのペットコーナー。今日はそれのスペシャル企画で、沢山の仲睦まじい光景が俺の里心を刺激した。もう1週間も俺は王子に、ギュ、されないままで暮らしていたから。
「でも、恋人じゃなくてもペットは別に構わないんでしょう?なんで駄目?俺、今まで普通に王子とああしてた。ギュ、って家に居る時、いつも一杯やってたよ?」
「ザッキー、これも何度も言った事だけど、それはキミがもうペットじゃないからだよ」
「もうやだ。ペットじゃないのやだ。王子、俺の事嫌いになったらやだ。前みたいのがいい」
「ああ、そういう意味じゃなくて、キミはもう人間なんだからって意味で、嫌いだからやらないんじゃないんだよ、わかるだろう?」
「やだ。嫌いじゃないなら前みたいにして?ギュってして欲しいしナデナデも一杯。王子、俺に一杯いい子いい子して?俺、お利口してるよ?出来てるよ?」
「そりゃキミはいい子だよ、当たり前だろう?でもね?えーっとなんて説明していいのか、同居?ルームシェア?つまりキミとボクは今までとはまた少し違った感じの関係性になりつつあるから」
「お帰りの時とかナシでもしょうがないかもしれない。でもお利口のギュも最近全然ないからつまらない」
「だから大人の人間はお利口のギュはナシなんだよ。キミの成長が感じられるからこそボクは」
「お利口のギュがないなんて意味ない!」
「ザッキー!だから違うよ?これは光栄だと喜ばしく感じるべき事なんだよ。なんで今日はそんなにいけない子なんだい?」
そうして俺は王子にキレた。徐々に心が成長している俺はもう、最初わからなかった今の王子の言葉の意味が成程十分理解出来た。でも、だからこそ心がそれを拒絶したのだ。思い通りに従わない時、王子は時々俺にこうして苛立つ事も増え始めていた。
「あー!わかんねぇー!!もう人間だとか、人間じゃないとか、人間になれるようにとか!」
人間の中にある、今まで知らなかった自分勝手の主の理不尽。王子は俺を人間として対等に扱いながら、時々都合の良いように犬の頃の服従を強いる。ここには所謂平等はなく、あの夜傲慢に俺を締め付けた王子の力が体いっぱいに思い出されて、俺はあの時の自分みたいに自分の理性にヒビが入る。
「王子昨日俺の事人間じゃないからスープ飲んじゃ駄目だって言ったくせに!」
「あれはコンソメなんだよ。万が一って事があるだろう?犬だったキミに玉ねぎを与えるのは流石にまだ怖いから」
「玉ねぎって野菜だろ?あれは汁だったじゃないか!すっごいいい匂いで美味そうだったのに」
根こそぎ奪われた犬のメリット。そこには人のデメリットがこれでもかというほど沢山ギュウギュウに詰め込まれていて、なのに犬のデメリットだけは俺の中に残されたままに、未だ人のメリットの入る余地なし。
(王子は俺を裏切るんだ。きっとそうして俺を一人にする)
ひび割れた心の、後遺症だった。あの日から俺は、王子の愛情を心のどこかで信じ切れない。

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