お花結び

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犬の俺だってわかる事

特殊設定閲覧注意。お題文から始まる後天性人化(黒)わんこ崎です。三次創作を完全に勢いのままに……はるさん許可ありがとうございます!(三次創作と言いながらも完全にパラレルで犬な崎なところだけが同じですしキャラも崩壊しています)

ボクの可愛いエリザベッタ

「つまり、犬じゃなくなった俺は春とか時期じゃなくても発情しちゃう体になっちゃったって事ッスよね?」
「そうだよ」
「性欲のコントロールは出来るけど、生殖を目的としない物理的な処理も、雄の場合は常に必要である。そういう感じ?」
「……」
「だから王子は雌と寝る?俺にしてくれたみたいに自分で処理なんかしたくないから?要するに子供が欲しくて交尾してたわけじゃないのか。最初からこういう意味がわかってれば色々混乱する事もなかったのに王子。これなら犬とよく似てるし」
 王子はとても困った顔になる。彼の苦手分野のようだ。
「もう俺覚えましたよ?こういうのを、本音と建て前っていうんだ。ややこしいッスよね」
「……そうだね」
「犬は発情期になると異性を見つけたら即交尾だ。ま、俺はやった事ねぇしやり方も具体的には知らなかったけどな」
勿論今は知っている。交尾とは具体的にどういうようにしてするものなのか。人と犬の生態の違い、そして時期と手法のその手順。全部王子が俺にくれた勉強道具からの知識だった。
「……キミにお似合いのお嫁さんは色々見て回ったりもしたんだけどね。この子ならって子を見つける前にキミ、人間になっちゃったから」
「そうだったンスか。全然知らなかった」
「今ならわかるだろう?お散歩で見かけた子と手当たり次第にそれをしちゃったら、色々問題が起きるんだよ」
「そッスね。王子が必死で止めた理由、今なら。父親になるとか意味が全然わかってなかったし」
「ま、犬のキミの場合はそれでいいんだろうけどね。相手もある事だし飼い主のボクはそうもいかないから。赤ちゃん面倒見てくれる家を探したりとか、雑種となるとまた大変で……」
「?」
「ああ、キミの血統はとても素晴らしいし、じゃなくてもキミの素敵な理由は色々あるよ?ちゃんとボクはわかってる。でも、皆が皆それが理解出来ている人間ばかりでもないのは確かだから」
「わかりますよ。あれでしょう?人間は生き物に流行とか先駆けとか財産的な価値もつけたがるのもいる。そういう輩は血が混ざってんの繁殖して欲しくないし邪魔なんですよね、知ってます」
「……なんかゴメンね?」
「王子が悪いんじゃないッスよ。それで食ってる人もいるんでしょう?社会の仕組みの一部として。弱いものは淘汰される。それは自然の摂理だ」
「キミは淘汰されるべき弱き者なんかじゃないよ?」
そうして王子は悲しい顔で、もう何度目かの、俺達の出会いの日の話をし始めた。彼はその話をするのがとても好きだし、いつも運命の一言で終わるのが決まりだった。小さかった俺は、全然記憶にないのだけれど。
「ある日ボクが歩いていると、お店からボクを呼ぶような光が見えたんだ」
「するとそこには小っちゃくって毛玉みたいなキミがヌクヌクのゲージの中でね?」
「その時のキミは言葉を話せたんだよ?なんでボクを王子と呼ぶの?本当にそれはもう驚きで……」
「つまりキミがいたからボクはあの日から王子様になったんだ」
「だからすっかりキミをお姫様だと思って最初名前をエリザベッタにって……なんだか笑っちゃうよね?ね、ザッキー?」
 その全てが作り話である事を、人間となった俺はもう知っている。純血主義を憎む王子はペットショップの存在すら強く否定しているはずの人だから、そもそも最初の一歩から嘘なのだ。それでも王子の語るおとぎ話は、今日も俺の心を癒す。俺達の始まりはきっと口にも出来ないような暗い過去から。それを包み隠す彼だからこそ、この出会いが、本当に運命なのだと思えるからだ。記憶はなくとも筆舌しがたい恐怖だけは俺の奥底に。
「ザッキー、あの日キミはボクを救ったんだ。本当だよ」
多分王子の言うのとは全部逆で、俺が光を見つけたのだ。きっと彼の手により救われた、毛玉のようにちっぽけで惨めで儚い命だったのだろう。

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