文学妄想お題ったー詰め 3
【10452文字】
文学妄想お題ったーで一日一ジノザキ。2015年6月の13本分。
【お題】三好達治「駱駝の瘤にまたがつて」
あなたは三好達治作「駱駝の瘤にまたがつて」 より「魔法使ひが灰にする水晶の煙のやうな 薔薇のやうなキッスもしたさ」でジノザキの妄想をしてください
<SS>
今でも俺は思う事がある。あの日、あの夜、一つ一つの打つ手が違えば。
俺はその頃王子に時々、食事をしようと時間を確保し、サッカーや海外事情も含めて、色々アドバイスを受けていた。けれど忙しい王子は5回に4回はデートなんだと、俺の誘いに断りを入れた。だからというわけもないのだけれど。いや、結局はそれが理由なんだろう。
「ねぇ、今日空いてるんだけど、食事、行く?」
初めての王子からの。俺は心臓がドキドキした。
「どうしたの?ザッキー」
「え?あ、いや……」
「ん?」
ほんの些細な見栄だったのだ。
「今日は、ちょっと……」
別に用事なんてあるわけがなかった。
「そ?」
「ええ、デートッス」
俺を頭からモテないと決めつけている、モテ男に対する小さな反逆。
(王子、どんな顔するかな?)
本当に、俺は興味本位で、すぐにバレる嘘をついた。バレるような嘘の、つもりだった。
「そ?なんだキミ、彼女いたのかぁ」
(……王子?)
今でも俺は思う事がある。あの日、あの夜、俺はあの人にあんな嘘をつかなければ。
「何?ぼんやりして」
「いえ、別に」
「なーに?言いなよ」
腕枕の腕をコトンと外され、俺は不平不満を言う。
「痛ってぇ!」
「大袈裟だなぁ」
あの日、あの夜、王子は俺に、「なんだ、残念」と言って、すれ違いざまにキスをした。
(あん時、俺があの場で嘘だって言わなかったら?)
何度となく思い返す。
(王子が、あの時、キスしなかったら?)
王子のキスは、今日も魔法だ。そうして俺の心を裸にする。
「王子、なんであの時、俺にキスしたンスか?」
「あの時?なんの話?」
「だから、あの、初めての……、ん……」
今日も王子は秘密のバラ色のベールを、一枚も脱ぐことなく俺を抱く。
—
???
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