お花結び

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文学妄想お題ったー詰め 3

【10452文字】
文学妄想お題ったーで一日一ジノザキ。2015年6月の13本分。

【お題】北原白秋「感覚」

あなたは北原白秋作「感覚」 より「見よ、少年の秘密は 玉虫のごとく、赤と青との甲斐絹のごとく、滑りかがやく官能のうらおもて。」でジノザキの妄想をしてください

<SS>

 キミはボクを好きだというので、そういうことなのかと理解した。なのにあまりに頑なな態度で、ボクは今更戸惑ってしまう。
「待って、本当にしたことが?」
 キスなんてただの挨拶じゃないか。それなりの相手となら誰とでも出来る。そんなボクの感覚では、流石に理解出来なかった。同性とはともかく異性ともなんて。
「じゃ、何がしたいの?」
「……」
「わざわざボクに告白をして?」
「……」
「よければ付き合ってください、なんて言っておいて?」
 返事をしない真っ赤なキミは、とても珍妙で不思議ないきものだ。
「つ、付き合うって、……そ、そういうのばっかじゃねぇッス。お、俺は王子とそんな、別に……」
 その時ボクは、恥をかかされたと感じた。まるで踊らされてしまったみたいで、カチンときて、イラッとして、だからボクは。
「ボクとそんな、別にって?……そんなって、どんなだい?」
 ボクは呼び水の卑猥に反応が欲しくなった。
「ね、それさぁ……本当に、そういうの、なし?っていう『好き』なのかい?」
 唇のかわりに指先を這わせ、目を細めながらキミに微笑む。体の反応は残酷なもので、ボクはキミのそれが欲しく思った。別に興味なんてなかったんだ。なのにキミは首を差し出し、そんな風に取り上げるから、なんだかひっつかんでやっつけたくなった。
「そういうの、しないで……大の大人が仲良く二人で、一体、どこで何をするの?」
 キミは本当に愚かでウブで、サッカーなんぞを見に行こうと言う。全く馬鹿げたこのちっぽけな子に、ボクの毒気が抜けていく。
「サッカー?このボクと?」
「なんかおかしいッスか?今度ユースの試合があるンスよ。きっとあんたが行けばみんな張り切る」
 全く以って、理解不能だ。サッカーはやるものでみるものではない。
「ここに居るみんなは、あんたのことが大好きだから」
 恥ずかしげもなく、みんながボクを好きなんて当然のことを言い。
「きっと励みになると思う」
 はにかみ微笑む健気なキミに後輩に対する思いを見た。やっぱり恥をかかされた。ボクはそんな気分だった。
「みんな『好き』……?」
 みんなの好きのためにボクを動かす。フロントでもないキミが、操縦を試みる。それがどれだけ無謀なことか、キミは何一つ気付いていない。
「はい、ちょっとでいいんです。顔出す程度で。……そりゃあいつら口では色々言うかもしんねぇけど、それは素直じゃないだけだから」
「……」
「絶対そうだから。自分らの為にエースが見に来る。そんなの、嬉しいに決まってる」
 キラキラと輝く明るい表情に、なんだか不思議な既視感があった。そうして思い出すひとつの記憶。生意気で、反抗的な目の、黒髪短髪の、あの日のキミ。些末過ぎて忘れてしまった、たまたまの星めぐりの、少し退屈なプリンスリーグ観戦。
「そっか、キミもあの時、そうだったんだ?」
 指摘を受けて、みるみる染まり、汗はびっしょり、しどろもどろだ。
(焼け付くような。そう、か。思い出したよ、あれが、あの子がキミだったんだね)
 ゲームの中のたった一つの見どころのキミは、誰よりもボクの存在を意識していた。プレイをミスしてボクを見て、ゴールを決めてはボクを見た。キミは愚かなほどに情熱的で、とても健気で可愛かった。今でもキミは対等じゃなかった。ボクに憧れ、ボクを意識し、そんなにも大袈裟にボクが好きで、なのに『そういうのじゃない』と言う。
「今でも……そうか成程。口では色々言うけれど、それは素直じゃないだけなのかな?」
 ボクが皮肉にもう一度笑えば、
「いや、あの流石に俺、そんな大それたこと、まだ、あの……」
キミはともかく、しどろもどろで、ボクはひとまず満足をして。
「ぅわ!」
「ホント、大袈裟だな」
 たかが頬への。今日はこの辺で許してあげよう。


元ネタググったけど「眼は喇叭」って、「喇叭」とか読めないッスよ白秋先生

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