お花結び

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文学妄想お題ったー詰め 3

【10452文字】
文学妄想お題ったーで一日一ジノザキ。2015年6月の13本分。

【お題】北原白秋「断章」

あなたは北原白秋作「断章」より「いかにせむ……やはらかに眼も燃えて、ああ君は唇をさしあてたまふ。」ジノザキの妄想をしてください

<SS>

 話があると呼び出されて、真面目な話だと、やがて怒鳴られ。ボクは自分でこう思った。とてもらしくないことをしている。
(こういう口論なんて、どれだけぶりだろう?)
 先読むボクの言葉は相手の心をいつでも宥めて、そうとも気付かれぬうちにその場を穏やかに治めてしまう。なのに今日は何やら調子が変で、話せば話すほど炎上をする。ボクは黙って、キミはがなって、うんざりしながら心を飛ばす。
「聞けよ!」
「聞いてるよ。キミはボクを好き。だろう?そんな言葉、何度も何度も言うものじゃない」
「!」
 『愛を囁く』とはそうではない。ボクは冷徹にキミを見ていた。
(聞けよって、馬鹿かい?聞いて欲しいなら、まず相手が聞きたくなるような展開に持ち込むのがセオリーだろう?)
 自分の不器用に自らが躓き、キミはこんがらがってすっかり迷子だ。
「そしてボクは『わかった』って言った。キミこそちゃんと聞いてた?」
「聞いてましたよ!だから怒ってるんだ」
「怒る意味がわからないよ」
「わからない意味がわかんねぇッスよ、普通そういう返事なんて」
「普通?くだらない」
 ボクは今、憤る彼を楽しんでいるのだろうか。それとも何かを苛立っているのか。ともかくボクは今に相応しい適切な答えを理解しながら、どうしてもそれを選びたくないと思った。キミが間違えているせいだと思う。
「じゃあ言おうかザッキー?好きだからってなんだっていうの?」
「なッ」
「そんなの言われる前から知ってる。ボクは好かれることには随分と慣れてる。だから何?たかがその程度の話なんだよ」
 傷付くキミの顔は素敵だった。ボクにもっと傷付き、もっと乱れされ、そうして潤んで、やがてボクを。
「た、たかが?」
「ん」
「その程度の?」
「そうだよ?今更だ。キミはボクを好き。ああ、そうだよね、って。何かいけない?」
 もっとだ。
「……」
 キミは怒りと孤独に体を震わす。一体何を望むかも知らないままに。
(駄目か……)
 立ち去るキミの情けなさに、ボクは心密かに失望をする。
(そう、結局そういう……)

 ある日不躾に掴みかかられ、ボクを壁に追い詰めてキミは言った。
「あんまり人を馬鹿にしない方がいいッスよ?」
 キミが不快になるように配慮を続けた。その甲斐あって、反応が再び。
「何が?」
「あんたが何したいのか知らねぇけど、もういい加減我慢の限界なんスよ」
「へぇ、我慢?一体何の?」
「わかってて言ってんだろ?俺が欲しいのはあんたの返事なんだ。その気もねぇくせに、からかうのはもうこれっきりにしてくんねぇかな」
 キミは詰め寄り、詰め寄り、そうして目と鼻の先、ギリギリと締め付けるようにキミは言う。もっとだ。もう、一息だ。
「ボクの気持ちがなければキミは、ボクを諦められるとでも言いたいのかい?それはとても狡い論理だね。笑えるよ」
「……ッ」
「じゃ、キミの気持ちなんてたかがその程度の?そんな偽物なんて、ボクは」
 ここまでされて、ようやくキミは、本当に欲しいものをボクから奪う。ボクの心を全く無視して、我欲にまみれてキスをする。随分と長い、けれどただ唇を押し当てるだけの無骨な接触に、ボクはいつになく興奮をおぼえた。
(ああ、もっと踏越えて、うんとボクの傍においでよ)
 告白ごっこにドギマギするほど、ボクはそんなにはウブではなかった。
(好きだから、なんだい?ザッキー?もっと教えて)
 ボクに人一倍従順なキミだからこそ、その無礼がとても貴重な花だ。
(ねぇ、どんなにボクが好きか、その情熱の大きさを量らせて)

 キミは恋にタフではなかった。だから尚更、ボクは煽ろう。キミはキミ自身を正しくは知らない。どれだけ欲しがりかを、キミは知らない。


チョロ崎君は今日もチョロい。

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