文学妄想お題ったー詰め 3
【10452文字】
文学妄想お題ったーで一日一ジノザキ。2015年6月の13本分。
【お題】中原中也「盲目の秋Ⅲ」
あなたは中原中也作「盲目の秋Ⅲ」より「私の聖母!とにかく私は血を吐いた!……」でジノザキの妄想をしてください
<SS>
当たり前のように俺は王子の虜になって、なのにあんたはそうではなかった。まるで初めて存在を知ったように、あの日笑った王子が憎い。
好きで好きでたまらないのは、いつでもいつまでも俺の方だ。遠く離れて今なお思うは、あんたの匂いと温かさ。
(寂しい、眠れない……王子、苦しい……)
俺は今日も自ら口にも出来ず、ただひたすらにそれを待った。気紛れに鳴る王子からのコールに、俺はいつでも耳を澄ませた。
心に溢れかえる泣き言に苦悶するのは移籍前からわかっていた事象で、哀切を一瞬にして霧散するのがあの人だけなのも、最初からわかりきっていたことだった。同情されるのは真っ平だ。でも、俺を忘れないでと切望の矛盾。
RRRRR
たったそれだけで、心は東京に飛んでしまう。俺の人生はここにあるのに、王子を感じると時が止まる。また都合の良い夢を見る。俺はあの人の過去ではないのか。
俺はとても素直じゃなくて、それにも増して意気地もなくて、こんな心待ちの王子からの電話に、
「あんたも大概暇人だな」
なんて馬鹿を言った。
『おや、つれないね』
今日はいつもよりワンコール早く出たくせに、と指摘を受けて、待ちきれなかったんだね?と笑われてしまう。この気恥ずかしさと心地よさは、いわゆる愛されている実感だろうか?どれだけ時を経ようと、その断絶は綺麗に消える。不思議な、不思議な、王子の語り。
不思議王子の声は子守唄だ。今日も眠れぬ夜に睡魔を呼ぶので、沢山沢山話がしたいのにいつも気付けば朝を迎える。俺は電話がいつ切れたかも知らないままに、ただ次のコールをまた待つだけになる。
(また聞けなかったな)
数時間も無言のままのつながりであろうそれを、王子が何を思い、過ごしているのか?そこに愛を見ては駄目か?そうして俺はまた思った。俺の不器用で屈折した愛を、彼は見るのか?何を思うか。
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過保護なジノママ
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