文学妄想お題ったー詰め 4
【23928文字】
文学妄想お題ったーで一日一ジノザキ。2015年7月の17本分。最後のやつだけ本誌ネタバレ的なSSになっています、注意。
【お題】宮沢賢治「小岩井牧場」
あなたは宮沢賢治作「小岩井牧場」より「もうけつしてさびしくはない なんべんさびしくないと云つたとこで またさびしくなるのはきまつてゐる けれどもここはこれでいいのだ すべてさびしさと悲傷とを焚いて ひとは透明な軌道をすすむ」でジノザキの妄想をしてください
<SS>
思いを告げても返事はなかった。それでも俺達二人の日常には、僅かばかりの変化はあった。良くも悪くも、親密になった。
俺の誘いに乗る事は一切なかった。それでも王子は時々、俺を誘って遊びに出掛けた。二人で外出と張り切ってみれば、単にパーティの人数合わせであったり、彼女と出掛けた夜の送迎だったり。事前に連絡がある時もあれば、何週間も没交渉でいきなり今すぐという時もあった。俺はいつでも断りを入れず、王子もまるきりアテにした。
あの人は俺を下僕と思って、俺はそれでもいいと思った。だってあの人は人の心を扱うに長けて、嫌と思う暇を与えない。
寂しさに心が澱めば、
「どうしたの?つまらない?」
なんて言いながら時々、耳打ちついでにキスなどをするし、気が向いたら時々王子は。
「今日来る?うちに」
そんな日の王子は、手料理で俺をもてなしてくれる。そしてやってくるのは悲喜こもごもの、優しく残酷な癒しの時間だ。
「さ、おいで」
王子は俺のご機嫌取りに、抱き締め、キスして、愛でてくれる。
「いいよ、そんなに声我慢しなくても。だって最近全然かまってあげられなかったものね」
もうすっかり風習になってしまったこのご褒美は、とても甘くておいしい飴で、俺はそれまでの悲憤を忘れて、王子の肌の虜になる。
「キミはボクが大好きだもの。出ちゃってもしょうがないんだから」
「~ッ!」
「ボクでそんなにエッチになっちゃうキミを見るのも、全部それをさせてるボクなんだから。」
「~~ッ!」
「どうせ我慢しきれないくせに……だってほら、こうすればもう」
「うぁッ!あッ」
「ギリギリまで堪えようとする健気な姿も悪くはないけど……でも、もういいからいつもみたいにうんとはしゃいでごらん?その為にしてあげてるんだから」
快楽に溺れる惨めな姿を、一番見せたくない人に晒す。
「そうそう、ああ、ザッキー酷い有様だ。だらしなくて見られたものじゃない」
王子はこれが俺の秘めたる性癖と言った。プライドが高く我が強く、つまり体面を気にし過ぎる人間は寧ろ、暴かれる事に興奮をおぼえる。
「酷く嫌がっているようだけど、本当は嬉しいんだよね?だって、その為にキミはボクを選んだのだろう?」
「~~!」
「生粋のMなのにキミの意地っ張りは筋金入りだもの。なら、ボク以外にキミを満たせる人間なんて」
見栄を張りたい相手にこそ醜態を晒し、そのシチュエーションに陶酔をする。けれど俺を暴けるような人間はそうそういなくて、性癖その一点においてすら、
「キミがボクを必要とするのはただの必然だから」
と、王子は笑った。
けれど飴の時間はほんのひと時。みるみるうちに姿を消して、終われば帰宅をせかされる。
「ゴメンね?悪いけど男と一緒には眠れない性分だから」
脱ぎ散らかした服をポンと投げられ、暗澹が足元から這い上がる。報酬は終わり、再び使役の日々が始まる合図だ。
それでも俺は幸せと思った。王子もまたプライドの高い男で、かしずく下僕にすら淘汰があって、この小さくも甘い飴の施しについて、感謝こそすれ恨みなど。
(そう、王子にしてはよくやってくれている)
王子は恋人でなく友達でもなく。それでも、それでも、幸せと思う。俺の悦びの為にと王子がするのだ。彼の言うように、誰もこの飴を作れはしない。もうその幻がこの世にあるのだと思うだけで、俺は満ちて溢れんばかりに幸福なのだ。
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まあその実、大概ジーノも番犬好き過ぎますので、ベタボレ同士の単なるお預けプレイなだけです。飴の主成分は勿論愛情///とかくせぇことを言っておきますかねぇ
[maroyaka_webclap]
