文学妄想お題ったー詰め 4
【23928文字】
文学妄想お題ったーで一日一ジノザキ。2015年7月の17本分。最後のやつだけ本誌ネタバレ的なSSになっています、注意。
【お題】北原白秋「断章」
あなたは北原白秋作「断章」より「ゆふぐれの、ゆふぐれのゆめふかきもののにほひに、かくもまた汝とともに接吻けて、接吻けて、接吻けてほのかにも泣きつつあらば」でジノザキの妄想をしてください
<SS>
とても暑い一日だった。午前中ですら気温は高く、暑さを好まぬジーノの体はいつも以上に動きも鈍く。
「あーあー、そうじゃねぇかと思ってみれば案の定だ」
練習が終わって自主トレも済ませて、赤崎が早引けしたジーノの家にやってきた頃、男はソファで熟睡していた。赤崎はその姿をジッと見つめる。
(本当にこんなに王子が調子悪くなるなんて、知ってるのは俺くらいなんだろうな。皆単なるサボりと思ってる)
夏バテを知らない赤崎にとって、大人しく部屋で過ごす時間など単なる苦痛に過ぎなかった。けれどこうしてこの家に来るのは、その苦痛よりもジーノに対する心配が大きくなったせいだ。
今日はよっぽど暑さにやられたのか、荷物が点々とあちこちに散らかり、ソファに体を投げ出したみたいにうつぶせでジーノが眠っている。寝る直前に入れたであろうエアコンのリモコンもその手に軽く握りしめたままだ。
「こんなのでよくサッカー選手やってんな、この人」
手早く部屋を片付けながら、溜息をついた。閉める風習のない掃き出し窓のカーテンは今日もそのまま、ジーノの体に赤い日を落とす。繊細なプレイに相反して、ジーノの生活はところどころ、赤崎の目にはズボラに映った。
「『閉めたら窓の意味ないよね』とか言うなら、なんでカーテンつけてるんだって話だよ王子」
「う……ん……」
大きな伸びをして寝返りをうって、その仕草が夕陽の中で少し卑猥だ。赤崎の心臓がドキリと跳ねて、すると寝言か、
「眩し……」
と小さく呟き、ジーノは覆うように目を腕で隠した。すると印象的な目鼻立ちが消え、半開きの唇が異様に映えて、赤崎は見ていられなくてカーテンをひいた。
電気をつけ忘れた室内はといえば、おかげで 真暗な空間となった。それほど斜光度が高かった。
「うわ、これじゃ何も見えねぇ」
だからもう一度ほんの僅か、赤崎は一筋の光求めてカーテンを開ける。赤さは再びジーノの肢体を、今度は闇に映えさせた。
「……」
まるでコソ泥のように近づき、ソファの横に跪いて、赤崎はジーノを堪能する。
(王子にとって俺は男じゃなくて単なる犬で、だからこうしていとも簡単に俺は王子に近づける)
「王子、風邪引きますよ?」
ひと声かけて、ソファの端に丸まるブランケットを、ジーノの体に掛けてやると、とても重たそうに腕を動かし、ジーノは赤崎に返事をした。
「ん……?ああ、来ていたのか」
「だるそうですね、まだ寝てていいですよ」
「……」
ぼうっとした目がそのまま閉じて、赤崎は胸を撫で下ろす。ジーノが自分の前でくつろぐ姿をまだもう少し見ていたかったせいだ。けれど如何にも熟れた唇が赤崎の目の前に無防備なので。
(寝てていいかわりにキスさせろよとか。そんな事言ったらぶっ飛ばされるな、多分)
恋とか愛とかそうではなくて。赤崎は心にいつも言い訳をした。
(だってしょうがないだろ?毎日俺の生活には女っ気もねぇし、この人、なんか時々いやらしいから)
ミニスカートや胸元の開いた女性と同じに、赤崎の目はいつもジーノに夢中だ。
(大体男同士のくせにこそこそ肌隠すとか、そういう意識がまたこの人の変なところっつーか)
日頃ガードの固い男が、自宅の中だけだらしなく弛む。今日も襟元は大いに肌蹴て、そこが照らされて淫靡に輝く。
(気ぃ許してくれてんだろうなとか。嬉しくなっちまうだろうが)
ウットリとしながら今を過ごす。その唇の感触はどんなだろうか?捲って露出した腕の内側は?そんな妄想逞しくしながら、ジッとジーノを見つめていた。
いつしかすっかり夜になって、部屋の中も暗くなって、それでも暗さに慣れたその目は、眠れる王子を見つめ続けた。
(いい加減なんか飯買って来てやらねぇと……)
そう思いながらももう少しだけと。
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もうお題重複過ぎて飛ばしてたら全然書けないから、引いたお題の別の文章でSS書き起こすようになった7月ェ……それももうそろそろ限界だろうなぁ
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