お花結び

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文学妄想お題ったー詰め 4

【23928文字】
文学妄想お題ったーで一日一ジノザキ。2015年7月の17本分。最後のやつだけ本誌ネタバレ的なSSになっています、注意。

【お題】太宰治「かすかな声」

あなたは太宰治作「かすかな声」 より「信じるより他はないと思う。私は、馬鹿正直に信じる。」でジノザキの妄想をしてください

<SS>

「ねぇ、まだ怒っている?」
「……」
「次は絶対遅れないから。ん?」
「絶対絶対って絶対待ち合わせに時間通りに来ないじゃないッスか」
「そんな事ないよ、本当の本当に次はさ。ね?ほら、何食べに行く?そうだ、キミがこの前また食べたいって言ってたボロネーゼのお店行こうか」
「いっつも食いもんで誤魔化そうと」
「違うって、ね、ほら行こう?」

*

「……」
「やあ、ザッキー……怒ってる、よね?そりゃね」
「……あんたの絶対って何なんッスか」
「今日はさ、違うんだよ。本当にこんなに遅くなる予定じゃ」
「もういいッス。二度と信じない」
「そんな事言わないでよザッキー、もうこれっきりだから。ね?」
「出来ない約束はしなくていいッス」
「いや、だから」
「王子、いつも俺が何に怒ってるかわかってます?別に遅刻を怒ってるわけじゃない。嘘付かれる事が俺は……」
「嘘のつもりなんかじゃ、ねぇ、ザッキー許してよ。次こそはもう」
「許すも許さないも。ただ次は1秒でも遅かったら帰りますから」
「うん、構わないよ。だってもう大丈夫だから」

*

「……ホント、あの……さ」
「もういいッス」
「よくないよ」
「どうせ口ばっかだって、わかってましたから」
「……」
「で、今日は?ピザの店でも行こうとかでお茶濁すンスかね」
「ゴメン」
「ハ、あんたが謝るなんて気持ち悪い」
「だって1秒でも遅かったらって言ってたけど、キミったら30分も待っててくれて」
「……」
「そうだ、いい案があるよ?」
「?」
「今度からうちに迎えにきてよ。そしたらもうこんな目に合わなくて済む」
「え……」
「ん?」
「いや、あの……いいンスか?だって王子は絶対家に人呼ばないって評判で……」
「だってこの際、しょうがないじゃない?」
「でも俺、場所とかも全然……それに……」
「じゃあ、今から行こうか。場所教えがてら」
「いや、あの、そういう意味じゃ」
「おいでよ、まあ、なんにもないところだけど」

(ちょっと他のチームメイトより仲良くなれたかなって程度だったのに)
 遅刻も誘いも何もかもが、ジーノの策略と赤崎は知らず、戸惑い足もつれ後ろを歩いて、全身びっしょりと脂汗。

(駄目だな、あんまりにも可愛すぎて)
 待つ赤崎が好きなジーノはこの日も、到着しながらそれを眺めた。駄目だ、行こう、と胸に誓って、でも心細げな赤崎の姿が愛おしくて、わざわざそれを堪能せんが為に街角長く、一人立たせた。
(キミが帰ろうとしたら何食わぬ顔で出て行こうと思っていたのに。キミってばホント……)
「ち、近いンスか?」
「ん?」
「家」
「まあ、それなりかな?でも荷物あるからって今日も車で来ちゃった」
「そうだ、いいんですか?」
「何が?」
「鞄。注文したの取りに行くついでに、秋物も見に行くって、だから俺が呼ばれて」
「いいさ、今日は暑いから外ぶらつくよりのんびりしたい」
「だったら約束した意味が」
「ん?」
「荷物持ちが荷物持たないとか、俺、本当は帰った方が……」
「みて?車あそこに停めたんだ」
 初めて誘い込む自宅の罠に、ジーノはゾクゾクと身震いをした。その時赤崎はどうするだろうか?考えるだけで興奮した。
(あんなに怒ってても平気で待つんだもの。困ったなぁ、あまりにも据え膳で……本人がまた無自覚なところがなんとも)

(王子、男嫌いだからこういう場面想像した事もなかった……)
 よっぽど自分は気に入られている。ただそんな実感が湧いた。
(遅刻もブッチも当たり前なのに、なんでかこの人また誘うんだよな。どうでもいいから来ないんだとか、単なる被害妄想で単に時間にルーズなだけか?だって用事なんてそっちのけでいきなり家に連れてってくれるとか、それって本当に特別扱いじゃね?俺が待ってたからか?王子、嬉しかったのかな)
 赤崎はジーノが好きだったけれど別に人として好きだっただけで、今、自分に何が起こるのかわからないまま呑気に罠めがけて歩みを進める。ジーノに対する信頼は何度裏切られようと傷一つつかない馬鹿正直な程強固なもので、ただ心揺れる理由の自信のなさが、今はジーノの笑顔一つで払しょくされる。
(こんなことならなんか用意しておくんだったな。つか突然だったし、それに御呼ばれの用意とかも何がいいんだかさっぱり想像が……)

 街角の小さな花屋や人気のケーキ屋、色々赤崎が思案する間もなく、スタスタ軽やかにジーノが行く。自分が何よりも素晴らしい手土産なのもわからないままの、可愛い番犬を従えて歩く。

 ドンドン歩いて、鍵を開けて車に乗り込み、ようこそようこそ部屋に招いて、ジーノが言い放った言葉とは。
「酷い汗だね、クーラー入れるからシャワーでも浴びてきたら?」
「は?いや、それは」
「あまりにも汚いよねって言ってるんだ。ボクも次入るんだからいいだろう?ハリー、ザッキー!」
「あ、ウッス!」
 何故そうまでも清潔を望むかわからないまま、赤崎は素直に浴室に向かった。


確かにその時の顔が私も見たい

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