文学妄想お題ったー詰め 4
【23928文字】
文学妄想お題ったーで一日一ジノザキ。2015年7月の17本分。最後のやつだけ本誌ネタバレ的なSSになっています、注意。
【お題】北原白秋 「断章」
あなたは北原白秋 「断章」 より 「ああ、かなし、あはれ、かなし、 君は過ぎます。」でジノザキの妄想をしてください
<SS>
どれだけ愛を囁かれても卑屈になる。卑屈に耐えられず王子を切った。あの人は俺には過ぎた人で、切ってひとまず安堵した。
けれど、俺はおかしくなった。今もう俺の全てはあの人が軸で、支えを失いきりもみを始める。王子と居る事に耐えられない俺は、王子が居ない事にも耐えられなかった。なんら変わらぬあの人を見ながら、壊れた俺はこう問うた。
「王子」
「ん?」
「王子を知りませんか?」
「ボク?」
「いえ、貴方ではなく、王子の事です。あれからあの人、何処に行ったのかわからなくって」
「……」
「……変なことを聞いてしまいました。忘れてください」
*
はきはきとした口調で混沌を問う姿に、ボクは最初、愚か極まりない挑発のつもりなのかと錯覚をした。でもそうではないのだと分かった今は、その姿がとても痛々しくて切なかった。
(今のキミのその手を引いて愛していると抱き締めるは易い。でもそれをまたやれば崩れ落ちるように転がり込んで、キミはもう二度と自分の足では歩けなくなる)
キミはボクに溺れに溺れて、やっと抜け出し、今は干からびて息絶え絶えだ。
(参った。もう少し早く手を離してあげるべきだったな。気丈さは脆さの裏返しだって、なんとなく感じてはいたというのに)
「王子?」
「ん?」
「やっぱり知らないですよね。仕方ないよな……じゃ、失礼します」
仕方ないと立ち去る今日のキミは、昨日も問うた事を忘れてしまった。明日も、明後日も、愛に飲み込まれてしまった甘い悪夢の記憶を探して、ボクに繰り返し問う事だろう。
(我慢は苦手。でもやらなければ。でないと今の意味がない)
それは二人だけのかくれんぼであり、けれどキミは一人でそれをしている。キミを求め心待つボクは、あの子が己を取り戻す事を心切なく願っている。
(ボクが本当にやりたいのは支配ではない。ならばこうするしか選択肢がない)
ボクの重さに耐えられぬキミを、ボクは責める気など一切なかった。右往左往を繰り返す姿が酷く悲しく、逞しいはずの足を萎えさせ続ける、そんな我が身を少し恨んだ。
(……キミの愛も大概重い、ね)
それは悲しい事実でもあり、身に余る光栄ともボクは感じた。
(キミの苦悩を無意味にはしない。それが今のボクの仕事だ)
キミの願う世界に一日でも早く、ボク達二人でたどり着きたい。
(頑張ってね、ザッキー?待っているよ)
—
うーん……
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