文学妄想お題ったー詰め 4
【23928文字】
文学妄想お題ったーで一日一ジノザキ。2015年7月の17本分。最後のやつだけ本誌ネタバレ的なSSになっています、注意。
【お題】高村光太郎「人類の泉」
あなたは高村光太郎作「人類の泉」より「けれども 私にあなたが無いとしたらーー ああ それは想像も出来ません 私にはあなたがある あなたがある」でジノザキの妄想をしてください
<SS>
ソファに並んで座ったジーノの、小指にさりげなく赤崎が触れる。いつものバツの悪い子供のような仕草にジーノは笑い、するりと手を除けて肩を抱いた。
その瞬間赤崎の体には緊張が走って、でもそれもいつもの事だった。やがてコトリと肩に頬寄せ、大人しくそこにおさまるを見たジーノは、その気持ちをすかさず察して、やんわりと反対の手を繋ぐのだった。
「……」
今日は何かと色々あって、赤崎はとても疲弊していた。だからジーノの持つ、人としての当たり前な温もりが必要だったのだ。
*
幼き頃から甘えるが下手で、いつしか父母の膝の心地良さを忘れ、最早赤崎はそれを求める心すらもすっかり見失ってしまっていた。赤崎はそうして知らず知らず、とっくに大人になったと思い込んで、そんな頃に二人はここで運命のように出会ったのだった。
「……」
黙って身を寄せ、時を過ごす。目を閉じて皮膚に意識を寄せる。そこには血の巡り、それによる温もり、息を吸って吐く穏やかな起伏。そこから得られるのは、全身に降り注ぐ穏やかな愛の感覚であった。これがないまま生きてきた過去を思う。その度赤崎は泣きそうになった。
(傍に居てくれる人がいるって、なんか想像以上に凄い事だ)
心理的なものはともかく、物理的な存在で今ある安心感を赤崎に与えているのが、よりによって、あの『ジーノ』なのだ。王子と自称するに相応しい美貌と実力。孤高をきどるでなくそれを冗談めかしにネタにしてしまうほどの寛容さ。まさに少し前まで想像もしないような日々がここにはあった。赤崎にとってジーノはつまり、良くも悪くもその魅力の全てに囚われ飲まれる、唯一無二の存在であった。誰にも見せなかった心のひだの、隅々まで簡単に掌握をする。表現力に問題があって誤解される事に慣れ過ぎた赤崎には、自身ですら気付かぬ傷を手当てするジーノの力は、まるで超能力のようなものだった。
(でもきっと俺をわかるのは王子だけだけど、王子は俺だけじゃなくて皆の事がわかる人で)
それは想像というより寧ろ事実で、そんな人が今傍に居る事に尚更奇跡を赤崎は感じる。
(温もりが欲しければそれを、沈黙が欲しければそれをくれる。凄く不思議だったけど、今はもうなんでなのかとか、どうしてそんな風にしてくれるのかとか、全部どうでもよくなってきちまった。きっと王子がそういう人だからだ。俺には不思議でも、理解力と行動力があって本質的に優しい王子には、こんな事極々当たり前の)
触れているだけで赤崎の体の、端から端まで英気が宿る。
(王子が俺の傍にいてくれる。その現実一つで、俺はこんなにも強くなれる。自分を信じる事が出来る)
そうして当たり前のように睡魔は訪れ、当たり前のようにジーノは言った。
「ここで寝ちゃうと風邪引くから」
当たり前のようにベッドの中で、二人はハグしてキスして眠る。ただ穏やかな温もりだけの、その日々が赤崎の日常であった。ジーノはいつでも優しい港だ。荒波の海を渡る赤崎が疲れた時に、癒して、満たす、必須の安らぎ。
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三人称めっちゃ書くの苦しい
同じお題を引いたので、次に続きます
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