一途
【14790文字】
遠征の度にジーノに誘われ「10階」に行くようになった赤崎。けれど、暫くして自分のモノにはなりきらないであろうジーノを本気で好きになり始めてしまった事に苦悩する事に。ジーノもまた自分と赤崎ではそもそも合うわけもないという心理の元で、ある時から着かず離れずの距離を保つようになるのだったが……?
お題ったーで連作をし始めたら思ったより長くなったので抜き出しました。
あなたは太宰治作「思案の敗北」 より「私は、いま、多少、君をごまかしている。他なし、君を死なせたくないからだ。」でジノザキの妄想をしてください
<SS>
いつまでも恐ろしげに抱かれるキミがとても可愛くも憎くて、ボクは常々意地悪をする。なのに飽きもせずにいつもキミは、ボクを素直に待っている。
(今日はやめておこうかな)
エレベーターの前、約束の時間。人目を気にするボク達の決め事は「そこに立つのは数分以内」だ。キミはとても律儀なので、きっかりそれを順守する。けれど試合が終わった後のキミは、ずっとボクに拘束されている。何故なら約束の時は常にボクの指示で変化し、その指示を今か今かと、キミはずっとボクを見ている。指示しない時もあれば、指示して行かない時だってある。それでもいつもキミは待って、抱けば恐怖にまた慄く。
ボクはそれを何故かとは問わない。それでいいんだと納得もしている。出来るだけ関係は疎遠なままでと、いつでも終われる準備もしている。
「あんた、この調子で一体何人食ってンスか?」
キミはミスリードに上手に乗って、なのに、ボクは悔しさが滲んで歯噛みする。
「この調子って?」
キミはボクを愛する事に恐怖している。帰り道がないと何も出来ない。なのにその道を提示するボクを、時々恨んで牙を剥く。キミはとても愚か者だ。キミと過ごさないこんな夜に、本当にボクに誰かがいると信じる。けれど、キミのその愚かを愛おしむボクもまた、キミと同じに、いや、キミ以上に。
「……キミみたいに抱くのは、キミだけだよ」
ボクはキミが思うほどには我儘ではない。怖がるキミの為に、今日も怖いボクを用意し、だからその分意地悪なボクを、キミに許して欲しく思う。
(……ハハ、結局……我儘って事なのかな)
いつでも思うのは「出来得るものならば、こんな風でなく」。けれど、ボクの願いは届かぬ願いだ。キミの為ならばこそ、ボクはこれを是としよう。何故なら、キミのような子は、決してボクに恋すべきではないからだ。
「さあ、早く流しておいで。今日は少し遅くなった」
キミの恐怖は、とても正しい。幾度肌を重ねようと、心何処かで繋がれようと、ボク達は未来永劫、決して結ばれるべきではないのだ。
だから、
――ではなぜ自分達は、この一時を望み、そして成すのか?
無限に繰り返されるその問いだけは、決して互いに口にしてはいけない。全てを壊すその問いの返事が、迂闊に零れる日のない為に、だ。
[maroyaka_webclap]
