一途
【14790文字】
遠征の度にジーノに誘われ「10階」に行くようになった赤崎。けれど、暫くして自分のモノにはなりきらないであろうジーノを本気で好きになり始めてしまった事に苦悩する事に。ジーノもまた自分と赤崎ではそもそも合うわけもないという心理の元で、ある時から着かず離れずの距離を保つようになるのだったが……?
お題ったーで連作をし始めたら思ったより長くなったので抜き出しました。
あなたは太宰治作「もの思う葦(その一)金銭」より「君がほしければ、君に、あげる。」でジノザキの妄想をしてください
<SS>
ある夜、ベッドの中でうたた寝るジーノに赤崎は言った。
「王子」
「……ん?何?眠れないの?」
「もうすぐですね」
「何の話?」
「何のって、だから」
「……?」
「け……結婚……ッス」
「誰の?」
「誰のって……」
「え?嘘、キミの?冗談でしょ?」
「んだよ、もう脳ミソ閉店してンスか!?結婚っつったらあんたのに決まってンデショ」
「は?決まってるって何が?」
「勘弁しろよ!だから結婚!一家の主ともなろうものが、そんないい加減な事でどうすん」
「待って、キミまだあのデマ信じてたの?」
「デマ?」
「言わなかったっけか」
「言ってねぇよ!」
「あ、そ」
「あ、そ、って……軽すぎんだろ……あんた俺がその件でどれだけ葛藤を」
「ああ、そういう意味なら別にいい事じゃない。心の鍛錬が出来てさ」
「!」
「それにデマじゃなくなる日も来るかもだし」
「な……」
「嘘だよ。ザッキーはイチイチ単純だなぁ」
「あんたに信用がないからだろ!」
「え、そうなの?」
「当たり前!」
「当たり前なの?」
「だ、だって、そうでしょう?」
「ふぅん……?」
赤崎は「当然悪いのは俺じゃなくて王子」と思ってはいたが、こうして居直られると結局バツが悪くなって何も返事が出来なくなってしまった。するとそんな赤崎にかわり、ジーノがシレッとこう言った。
「っていうか、本当に不倫覚悟でボクといるつもりだったんだね」
けれどジーノの機転で話題が変わったものの、赤崎はそれでも何も言えない。
「不道徳が大っ嫌いなキミなのにね」
「……し、仕方ねぇから」
口を尖らせ、愚痴を言うみたいにようやく赤崎は返事が出来た。
「仕方ないって?」
「わかってるくせに、性格ワリィな」
「何言われても平気。だから言ってよザッキー」
「言うわけ……」
「……」
「言えるわけ……」
「聞きたい。ザッキー、なんで仕方ないの?」
「それは……」
「お願い、言って」
「もういいでしょう?だってさっきもそうやって」
「確かめたいんだよ、何回でもキミの気持ちを。ボクは言葉が欲しいタイプだから」
再び言葉を詰まらせがちになる赤崎ではあったが、ウットリとジーノに見つめられてしまえば、もう抵抗など出来なかった。
「あんたは全然言わねぇくせに……俺だって本当はもっと」
「十分伝えているつもりだけど?」
「伝わってねぇよ」
「そうかい?」
「そうッスよ。そういうのは数言えばいいっつうもんでもないッスから」
「色々難しいものなんだねぇ」
「あんたがいくら俺一筋だって言ったところで、なんのあてにもなんねぇし」
「でもそれを言うとキミの体は」
「ちょ、体の話は関係ねぇだろ!?」
「あるよ、関係。嬉しいって、信じるって事でしょう?いいよじゃあ、もう言わなくて」
そうして平然とジーノはキスして、これから眠るには激しい欲望を赤崎の中から引き摺り出す。
「ん……王子、またそういう……」
「言葉のかわりにキスを返して?今日はそれで納得するよ」
赤崎はこうして言い包められる形で、ジーノの甘いキスに舌を絡ます。
「……これで、いいッスか?」
「もっと……」
「ん……」
「ザッキー、もっと……」
息継ぐ呼吸は乱れ始め、やがて互いを喰いつくように。
そこから先はいつもと同じで、赤崎は繰り返し「王子」と言った。体の隅々を確かめ合って、何度も何度も名を呼んだ。
「王子、王子……」
「ん、なんだい?」
「王子……」
それは当たり前のように溢れてくるもの。
「王子、好き……っぅんッ……」
「ボクもだよ」
「だから、早……く……あ……」
大袈裟な程押し広げられた両足の中心に、そっとあてがわれて期待に震える。
「はや、く……王子……」
大人しくその瞬間を待ち構える赤崎の姿を、ウットリ見下ろしながらジーノも言った。
「大好きだよ。可愛い、可愛い、ボクだけのザッキー」
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