お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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ドライブにいこうよ

【18033文字】
ガッツリ襲い受けジノザキ。性欲希薄盲愛狂信者的宇宙人攻のS調教というかなり特殊なお話。苦手な人はパス推奨。タイトルは「プルバックでゴー!(絵本)」シリーズから。絵本の上でくるくると周回する車はかわいいくて見ていて飽きなくて、でもどこにも行けないあの感じ、ちょっとした倒錯と狂気ですよね。

        ジノザキ

嘘と方便、愛と信頼

「好きだよ」
王子がそれを口にした時、随分と奇妙な気持ちになった。
「は?まあ、どうも……?」
その時も王子はクスクスと笑い続けて、ふとそれが止まれば深く長く息を吐き、俺を見て真っ直ぐにこう言った。
「多分、全然通じてないね。ずっと一緒に居たいって意味」
「……?」
「誰よりも君の傍に居たい。どう言えばちゃんと伝わるのかな」
一瞬納得しかけつつ、いやそれはないと混乱をした。王子は想定内だったのか、静かにそれの肯定をした。
「うん、ザッキー。それに近い」
「なるほど……って、え?違うでしょ?第一俺が考えたのは」
「愛の告白」
「そうそう、それッス」
「だから、それ」
かたまる俺にまた微笑んで、
「伝わったかな」
とまた笑う。なんだか急に恥ずかしくなり、背中にもびっしょり汗が流れた。
「暇なら一杯遊んでやって?少しの時間でも構わないから」
誘いを断らない人だと思った。確かにいつも楽しんでいて、けれどそういう王子の態度と『愛』という言葉は不似合いだった。けれど俺達はこういう形で漠然としつつも始まったのだ。

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 二人で会うのは楽しく思えた。そこにはあまり葛藤もなく、けれど心の片隅に王子の言葉が俺を見ていた。
「何?」
「え?」
「何か考え事をしているね」
「……」
王子の視線は時々怖くて、何をどこまで見つめているのか、緊張をするような場面もあった。こうして促す態度になって、でも嫌がればただ微笑んで、以後は目だけでそれを見るのだ。そういう空気は少し苦手で、口にするよう努力した。
「なんか、いまいちわからないなと」
おそらくはこうして言わずにいても、内容は覚られているのだろう。けれど聞き出すこの形式を大事にしている思いは伝わる。
「今の俺達の関係が、なんかこう、しっくりきてなくて」
「……」
「つまり……俺って王子の何なのかとか……返事も特にしてねぇし」
「返事?」
「その、告白の?」
「あぁそれ……」
「だって色々と失礼でしょう?ちゃんと、俺も向き合わねぇと?」
「……別に、そんなの気にしなくても」
奇妙な部分で興味が削がれて、本当に王子はよくわからない。
「駄目でしょ、俺は気になります」
「……」
「ちょっと、その聞きにくいことなンスけど、俺とその、王子は、いわゆるこう……」
「?」
「恋人?キス、とかそういう、あの」
「ふふ、そりゃ出来たら嬉しいけれど」
「……っ」
「ごめん。なんか気持ち悪いよね?」
その表情に心を揺らされ、俺の混乱はまた深まった。彼は俺に愛を語って、性的な欲望すらあって、それを言葉で確定されると自分の基盤がぬかるんでくる。
「ねぇ、ザッキー大丈夫?いいよ、全然しないでいい。一緒に居られれば十分なんだ」
王子の言葉は優しくて、戸惑う自分が恥ずかしくもあり、偏見であるとか、概念だとか、矜持も理念もわからなくなる。そういう未熟な俺に優しい、王子の心はとても偉大で、そういう彼に惹かれていくのも当然と言えば当然だった。

*

 初めて王子とキスしたその日を、今もはっきり記憶している。
「いいッスよ王子。キスしても」
百戦錬磨のイケメンなのに、染まる頬が乙女のようで、なんだかおかしな錯覚の中、小鳥のような口付けをした。
「なんか、今晩眠れねぇかも」
ドキドキし過ぎな俺に向かって、
「僕も」
と王子も優しく言った。俺のファーストキスだった。好きな人との初めてのキス。

*

「いいッスよ王子。俺、しても」
 初めて王子と寝た夜も、きっと死ぬまで忘れないだろう。俺は色々王子に無知で、ようやく自分も追いつけたなど、愚かな思いの中にいた。無理はしなくていいよ、と言われ、最初は優しさと受け止めて、やがて少しずつ焦りになって、不安は関係性を歪めていった。王子は俺に愛を試され、してなお、俺には信頼されず、とても苦しい日々を過ごした。

 王子は俺をからかったのか

 いつから、どこから、嘘だったのか

 なにもかもが、嘘だったのか

 結局女が良かったと?

 ゴミクズみたいに扱う気なら、俺こそあんたを捨ててやる

 沢山の侮蔑を投げつけた。王子は全てを黙って聞いた。誤魔化す嘘も、言い訳もなく、それこそが一番の侮蔑と思った。けれど事実はそうではなくて、震える唇が僅かに開き、やがて涙が一粒零れて、俺が彼に何をしたのか、何が彼に起きたのか、思い知る羽目になったのだった。

      ジノザキ