お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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切なく、悲しく、愛おしく

【26180文字】
視点交互。今回はかなり自分に気弱な番犬と、強情なくらいに頑固な飼い主です。多少?二人とも病み系ですかね。謎試練とそれの克服もので、でも構成そのものが肝なんで、あんまり事前説明が出来ません。ごめんなさい。2回読んでくれたら嬉しいです。個人的にはベッタベタのハピエンですけど、一応特殊タグ入れました。
長い割にはちょっと流れ的に端折り過ぎた感じもあるので、いつかやれたら書き直します。

        ジノザキ

「おかえり」
とその度にあまねく言われた。それでも俺はいつも不安で、優しい彼が手放せるよう、自ら自分を閉ざし続けた。

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「王子、俺腹減ったんスけど」
「僕はまだまだ眠いよザッキー」
「何スか、どんだけ寝る気だよ」
「君に搾り取られてヘトヘトなんだ」
「言ってろ」
愛は重いと考えていた。特に王子の溢れる愛は。
「あ、嫌だ。行かないで?」
「なんか適当に軽くつまんだら、すぐ戻ってきま……っ、う、ちょっっと!」
「もうあと少しだけ……そしたら僕も起きるから」
愛は、綺麗で、とても情熱的で、何度もそれには憧れて、手に入れたくて、けれど怖くて。
「王子」
「ん……?」
「ヘトヘトで、あんた眠いんじゃ?」
「うん、もちろんヘトヘトさ」
思った通りにその手が這って、何故だか不思議に怖くはなかった。
「俺もうさすがに無理ッスよ?」
「ふふ、もちろん僕もさ。さすがにね」
キスも、愛撫も蕩ける甘さで、満足そうに頬を寄せ、王子は静かに眠りについた。微笑み、目を閉じ、ただそれだけで、目頭が熱くてたまらなかった。

*

 俺がこの恋を忘れている時期、俺は王子にこう言った。
「やっぱ、頼られてなんぼじゃないッスか?」
「ふふ、君らしい考え方だ」
恋愛論というには拙い、そんな二人の思い出話。

 王子はみんなの知っての通り、ああいったプレイスタイルで、キャプテンマークを邪魔と言うなど、考え方がまるで違った。
「なんかいまいちよくわかりません」
「そう?」
王子の愛は美しかったが、概念だけしか知り得なかった。具体的なHowToを、思ってしまう俺は下世話で。
「だって、あてにされるの嫌でしょう?」
「ん?そうでもないけどね?」
「はぁ?じゃあ、まさかの尽くしたい系?いやいや、それこそないでしょう?」
王子はあれこれ質問する度、小首をかしげてふわふわ笑った。

 我儘王子が誰かに尽くす。そこが俺のジレンマだった。

(あんなにデートの下見まで……きっと、王子は……)

 どこまでも我儘でいて欲しかった。実際、彼はそうだった。嫌なことは一切せずに、聞く耳すらも持つ気がない。だからこそのその愛が、稀有なものとして輝いていた。俺の視点から見てみれば、相応しい相手などいなかった。王子がどれだけ求めていようと、お眼鏡にかなう人間なんて、この世にいては駄目だったのだ。
「どうしたの?急に黙り込んで?」
でも現実は、現実であり、王子はあの日も夢見る王子で、俺にはそれが許せなかった。許せないほどの綺麗さだった。

*

 ヒクリと体を震わせて、その度俺を抱き締めてくる。愛も眠りも深くて綺麗で、俺は俺が許せなかった。俺は王子が大好きで、王子も俺を溺愛していて、夢のようで、悪夢のようで、幸せなのに辛かった。

 彼もまた辛いに違いないのに、いつでもふわふわ微笑んでいた。溢れる愛をその身に抱え、いつかを信じて疑いもせず、待たされ、挙句に逃げられて、それでも何度も抱き締めに来た。俺は自分も王子のことも信じることが出来ない馬鹿で、それでも王子は全てを許し、呪縛を何度もその手で解いた。
――癒し、そして癒されたい
俺をひたすら守って癒して、自らの癒しは失っていた。
――残念なことも受け止め合って
俺の弱さの全てを受け止め、大丈夫だよと見守っていた。
――完璧を求められるのは続くと疲れる
あれはいつ頃の言葉だろうか。何を思ってのことだったのか。王子は疲れていたのだろうか。それでも笑ってくれていたのか。
「んん……ザッキー」
抱き締めてくる腕が優しく、再び眠りが深まっていく。精も根も尽き果てて、ようやく俺を取り戻し、自らを癒しているようだった。
 何故に、そうも、といつでも思い、それでも、だからと、考える。王子の愛も、あまたの傷も、浮かぶ笑顔も本物で、事実で、ただただひたすら溢れて、俺を包み込んでいくから。

 幸せそうな眠りを見ながら、俺の無骨な腹が鳴る。
(くー、なんか食いたいっ!限界だー……)
王子に比べて俺の心はいつでも小さな課題で一杯。それでも貴重なこのひと時を、守ってやりたい、なんて思う。
(やべ、また鳴ってるよっ。うるせぇなぁ!?)
やがてくつくつと笑いつつ、王子が目覚めてこう言った。
「なんて強烈な腹時計。おかげですっかり眠気が飛んだよ」
世界が突然眩しく思う。
「おはようザッキー。いい『朝』だ」
王子はまるで朝そのもので、
「何が食べたい?準備をするよ」
抱き締められて、キスされて、体の力が抜けてしまった。
「ほら、行こう?」
いとも簡単に抱き起されて、おまけに更に軽くキス、腕を引かれてよろめく俺に、
「大丈夫?」
なんて囁いていた。

 もう大丈夫。今度こそ。ずっと信じて微笑むだけの、そんな王子の傍らに、いてあげたいとようやく思えた。

「ん?」

 それほど王子が望み求める。癒してあげたい。愛したい。君には出来るとそんなに言うなら、俺だけにしか出来ないのなら、叶えてあげたい、今こそ王子に。

 キスしてあげたい。俺の全てで。

      ジノザキ