お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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赤ワインが生んだ、あの夜の回帰

【13188文字】
いつものように蛇足の当夜のお話です。飼い主に「待て」を言えちゃう犬は、きっときっとザッキーだけです!(でも当人はわかっていない)
久しぶりにコメントをいただき、感動と興奮で書きました。自分のために書いてるとはいえ、ワンパターンの上、めちゃ長くなって反省してます。ですが何とも(スケベ妄想が)楽しい週末を過ごすことが出来ました!感謝!二人はタフだなぁと言うだけの話デス。ワインってあんな感じのくせに?度数が結構高いですよね。

        ジノザキ

 昼から夕焼け、今は闇。窓を雨がうるさく叩いて、土砂降りだな、と我に返った。
(いつの間にこんな……今、何時だろう)
雨の不快に眉を寄せつつ、傍らで眠る赤崎を見る。愛しくて頬にそっとキスする。ジーノは全てが満たされていて、夢なら覚めないで欲しく思った。でも世の中はそんなに甘くはなかった。目の眩むようなまぶしい光、耳をつんざくような雷鳴。目を閉じてた赤崎が、現実に引き摺り戻されてくる。
「大きな音でびっくりしたね。けれどまだまだ夜だよザッキー」
まだ寝てようよと抱き締める腕。けれど赤崎は引き離し、ふらふらと起き上がろうとする。
「どうしたのザッキー、危ないよ」
「俺……俺……帰らなきゃ……」
「泊まっていけばいいんだよ?雨も降ってる。そうだろう?」
断続的に続く雷。まるで赤崎の混乱に呼応するかのような激しさ。生まれた幸せはワインの過ち。消し去りようもない過酷。
「帰らなきゃ、明日も練習だから。俺、帰らなきゃ……うち、帰らなきゃ……」
体はカタカタと小さく震えて、夢と現実の中で揺らめき、慌てふためいているようだった。赤崎の精神は強いが脆い。ジーノは十分理解していた。
「ザッキー……」
「帰ります、王子。帰りたい……」
赤崎は帰りたいというよりも、逃げ出したがっているようだった。戻らぬ時間を戻れと願い、今にも壊れそうだった。自責が激しいタイプの赤崎。心が自責で死んでいく。
「わかった。ザッキー、わかったよ。だからちょっとだけ待つんだ。お願い」
白濁に汚れた体を拭いて、上から下まで服を着させた。
「すいません、王子、色々と」
どれだけジーノがいいよと言っても、ずっと赤崎は謝っていた。視線は決してジーノとは合わず、こんな風になっているなら、魔法のワインを一口飲ませて、夢の中へと誘いたかった。けれど肩を抱くように導きながら、赤崎の車のエンジンをかけ、赤崎のために帰途に着かせた。どんなに土砂降りの夜であっても、雨濡れる不快をその身に受けても、選択肢など他になかった。

*

 赤崎の家に着いた際、すでに動く元気すらなく、赤崎を自分のコートで包んで、抱き上げるようにして部屋へと運んだ。その体は泥のように重たかったが、それどころではないジーノ。重さなんて感じなかった。
「こんなことまでさせてしまって」
正気のふりをしている赤崎。自責が心に食いついていて、その血の流れが目に見える。相応しくない。相応しくない。赤崎の中で響き続けた『駄目』に埋め尽くされている。
「大丈夫、俺歩けます」
「いいんだ」
「王子っ」
「しつこいよ」
愛の疎通は不可能だった。雷で赤崎が目覚めた後は、ずっと同じ調子であった。抱き上げる体は震え続ける。かわいそうにと力を込めれば震えは強まるばかりであった。

 赤崎の鍵を取り出して、ドアを開け、廊下に座らせる。用意をしてきたタオルも出して、濡れた赤崎の体を拭いた。ジーノは自分もタオルで拭いたが、部屋を濡らさないためだけで、かなりおざなりな拭き方だった。再び赤崎を抱き上げて、奥へと進んで着替えもさせた。そしてベッドにそっと寝かせた。ダメージで動けぬ赤崎を、一刻も早く寝かせたかった。今日の出来事はあまりに苛烈で、互いの愛を理解できても、過程の受け入れは不可能だろう。明らかに失態の形をしていて、そこに囚われてしまえば壊れる。
「眠れそうかい?」
「なんか……マジにごめんなさい……」
「泣いたら明日の朝、目が腫れる」
静かに涙を拭くと同時に、瞼を閉じさせた。そのまま掌を目の上に置き、赤崎に暗がりを作ってあげる。そのことでようやく落ち着いたのか、赤崎は謝ることをやめ、しばらくすると呻きながらも、寝息を立てて浅く眠った。
「ザッキー。君は大丈夫。立ち直ったらまた会おう?」
赤崎は悲惨な状態だったが、ジーノは生粋の楽観主義で、赤崎が驚愕の現実を受け止め、再び愛し合えると信じた。
「おやすみ」
と言って鼻先にキスをし、覚悟を決めた顔つきで赤崎の部屋を後にする。赤崎は今、苛烈の中で、そしてジーノはそれ同様に劇的な変化の中にいた。
「ザッキー、君が何を思おうと、僕は今日から君のもの。だって約束したからね」
ジーノの生粋の独占欲は、豪胆なほどに強く激しく、けれど赤崎の強欲は、はるかに上回るものだった。俺だけのものとジーノに言って、包み込むように丸呑みをした。抵抗も出来ない激しい束縛。有り余るほどのその情熱。ジーノが初めて今日知った、赤崎から得た幸せだった。

*

 ジーノは真夜中にもかかわらず、雨の中いくつかの電話を掛けた。タクシーは拾わず、雨夜を歩き、あくまでも友達と嘯き続けた仮初めの恋人達に伝える。
「遅くにごめんね。聞いてよ××。僕に恋人が出来たんだ。そう、とうとう。驚きだろう?今すぐ君に祝って欲しくて、我慢出来なくて掛けてしまった」
今日起きたあまりにも偶発的な、仲がいいだけの二人の急転。びしょ濡れになりながらジーノは笑う。報告の電話は際限もなく、延々日が昇るまでも続いた。全ての『友達』に祝われ終わり、朝日照り返す川面に呟く。
「ザッキー大好き。すごく好き」
どれだけ赤崎が疲弊しようと、ジーノは幸せを信じて笑った。この美しさは二人の夜明けで、いつか一緒に見たいと願う。
(でも僕は朝に弱いしなぁ……徹夜でなければ無理かもね)
それでもいつかは見れると思った。ここではなくても、いつかどこかで、恐怖や羞恥や失態でもない、二人の愛の夜明けを見たい。こんな風に生まれた愛だと、感動しながらキスしたかった。

*

 風邪など引いている場合でもなく、練習をさぼるなど言語道断。日食みたいに見えなくなっても、ワインの魔法が失われても、真実の愛をジーノは見つけた。今は戸惑いの赤崎を、慈しみながら遠くで見守る。約束はある種の契りと同じ。捧げる愛に身を焦がしつつ、ジーノは家まで歩いて帰った。

end

→あとがき

      ジノザキ