お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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ルイジ吉田withわんこ

【45600文字】
がっつりパラレルぐっちょりエロ、人族が犬族を支配するカースト社会で大金持ちの人族ジーノが二匹の犬族を手に入れるところから始まる童話風SF(童話風?SFか?)
考えながらの書きっぱなしで色々おかしいけど手のつけようもなくもはや推敲していく気力なし。いつも以上にライトな目線、完全に暇つぶし程度のお気持ちでご覧ください……二人とも選手じゃないの書いたのってもしかして初?かな?

        ジノザキ ,

危機

「ザッキー!?そこで何をしているの!?部屋から出ちゃ駄目じゃないか!」
廊下に倒れているザッキーを見て、ジーノが悲鳴を上げました。
 今日は連絡のつかないザッキーを心配して、突然バッキーが屋敷に尋ねてきたのです。それを知りジーノはザッキーに動くなと厳命をして、部屋を出てしばらくしてからのことでした。
「ザキさん!?」
バッキーが驚くのも当然です。ローブからのぞく腕は青白く細く、まさしく病人のそれであったからでした。駆け寄るジーノを追うバッキーでしたが、ジーノに一括されて立ち止まります。
「お願い、今日は帰ってバッキー」
言葉はとても穏やかに、でもそのコマンドは尋常ではない強さでした。
「でも」
パニック状態のバッキーにはいつもほどの効き目がなく、更に抉りこむように介入します。
「帰って!君にもうつったら大変だから!」
「……っ!」
「今度ゆっくり時間をとるから。わかるねバッキー?帰るんだ」
咄嗟には説明できないうつる病気。激しい眩暈。バッキーは薄っすらと事態を予想しますが、コマンドで受けた痛手が大きく動けません。ジーノは小さく舌打ちをして、人を呼びバッキーを送り出しました。当然、自分はザッキーを部屋の中へ。間に合ったのかも今の段階では見当もつきません。
「ザッキー、君はなんだってこう……」
しっかりとコマンドを通してから部屋を出たはずでした。通った感触もしっかりとありました。ザッキーはニコニコと笑っていました。ちっとも嫌がらないお利口でした。
「ごめんね、僕が馬鹿だった」
どれだけあそこで倒れていたのか。バッキーとの押し問答を何分していたか。ジーノにはさっぱりわかりません。気絶しているザッキーの頬には幾筋もの涙の痕、ジーノがいないというのは、空気がないのと同じこと。おそるおそる覗き込めば、耐えきれずコマンドを引き千切った傷跡が心の中枢にくっきり残っています。でもジーノの信頼に応えるために、ザッキーは千切らないように沢山の努力をしたことでしょう。
「ああ、こんなに……痛かったろう?」
破壊する力のないザッキーが壊れるはずのない枷を壊し、外気の毒もまた消耗したザッキーを苛んでいます。熱だけで済むなら幸い、ザッキーの衰弱はそれほどでした。
「もう何があっても離れない。約束するよ、ザッキー、だから」
冷たい指先を手で温めて、そこにキスしてジーノは言います。
「お願い、ザッキー。戻っておいで」
ザッキーの中のさなぎは暗闇の中。命絶えたようにとても静かで。
「ザッキー……っ」
蛍もプラズマも何もなく、ただ暗く冷たい静寂があるのみでした。

*

 その後、仮死状態になったザッキーを看病しながら、ジーノはバッキーに連絡しました。

ザッキーはかからないはずの病気になったこと。

自分には施設に入れる意思が全くないこと。

もちろん、他言無用のこと。

ザッキーを守るためなら君でも容赦しないこと。

 ジーノもバッキーが大好きで、バッキーは十分それを理解していました。自分の獰猛さに震えている時、綺麗だとありのまますべてを受け止めてくれた人だからです。バッキーは自分の過ちを悔いていました。ザッキーの様子はもちろんのこと、ジーノのこともとても心配でした。繰り返し謝るバッキーにことさら落ち着いた声で大丈夫だとジーノは言い、良くなったら一緒に遊ぼうなんて夢物語のようなことを言います。
「よくなったらって、そんな……」
バッキーも減薬の効果もあり知性的で、犬病が不治の病であることを知っていました。
「王子……王子は?体調とか」
「ああ、なんだ。大丈夫だよ、ありがとう。僕はアレにはかからないから」
優しい嘘だと考えます。二人ともこのまま死ぬ気だと。そんな絶望、認めるわけにはいきません。でも。
「信じて。ザッキーのために」
バッキーが納得できないことなど百も承知で、でもそれをつき通すつもりなことが伝わってきます。施設に入れても治りません。二人は一緒にいたいのです。
(自分は?もし、自分なら?)
バッキーは自分も今まさにあの屋敷で一緒にいたくって、でももうあの屋敷の子ではないので出来ません。仲間も、新しい飼い主もここにいて、この家での自分をないがしろにするわけにはいかないのです。だから、今出来ることは。
「……信じます。きっといつか元気な姿を……」
バッキーは昔からとても泣き虫です。
「連絡、ずっと待ってます……」
しゃくりあげながら言うバッキーにジーノは言います。
「うん、ありがとう。ザッキーにも言っとくね」

*

「バッキーがね。君に会いたいって」
静かに眠るザッキーの唇に、水差しで果汁を与えます。離乳食はやり直し。どれだけ抱き締めても抱き返してくることはなく、栄養が不足していることがよくわかります。
「ザッキー、戻ってきて……」
体はちゃんとここにあるのに、ジーノは暇さえあればさなぎを見に行き何時間もそこで過ごしていました。祈るようにキスをして、そうっとこわごわと抱擁します。
 受精は不可逆的な行為です。さなぎに今息吹はありません。
「お願い……」
感染性せん妄疾患の深層とはつまりこれでした。心が強制介入で破壊されると、暴走しそのうち死を迎えます。エネルギー(愛)の枯渇を以て息絶えるのです。暴走とは枯渇への恐怖であり、救助信号でもありました。何が必要かもわからないまま食欲性欲物欲を満たし、それでも減衰していくパニックの中で、やがて手当たり次第の強制介入を始めます。それも無駄だとわからないのです。感染性でありながら、元となるウイルスがどうしてもみつからないのは、ここに理由があったのです。探しても見つかるわけがありません。

 ザッキーは暴走前にこの仮死状態に陥っており、それが一縷の望みでした。そしてジーノの悲しみでもありました。
「戻って来れないならなんで僕を連れて行かない?今の君ならもしかしたら僕にも強要出来たかも」
ジーノに介入出来た人間はこの世に一人もいませんでした。されたいとこんなに切に望んだことすら。
「ねぇザッキー?あの部屋をどんな気持ちで飛び出した?今の僕みたいになっちゃった?」
死んでもいいから一緒に居たいと。
「……こんなの到底耐えられないよ……今は平気?痛いまま?」
引き千切られたコマンドの鎖はさなぎの中にまで食い込んでいて、それはジーノの威力というよりザッキーの愛と従順によるものでした。
「ごめん……してあげられること、何かある?」
数えきれないキスと抱擁。さなぎは静かに眠るだけ。切れないはずの鎖をぶら下げ、ジーノをズタズタにするだけでした。
「ザッキー……」

*

(食べなくちゃ)
 目覚める度に入れ替わる食事を見ながら、ぼんやりとジーノは思います。生身の体を持つ以上、食事は必要不可欠なのです。
 味のしない料理を流し込んで、シャワーを浴びて鏡を見つめ。
(駄目だ、見れたもんじゃない……)
荒れ切った肌を軽くケアを施し、髪を切り、手早く身綺麗にしていきます。すべてはザッキーのためでした。いつ見られてもいいように、そう、いつ目覚めてもいいようにと。
「おはよ、ザッキー。いい朝だよ」
日の光と広い公園が好きな子でした。でもジーノは厚いカーテンを閉ざしたままです。どんな刺激も厳禁なのをジーノがわかっているからでした。
「最後に出掛けたのはいつだっけねぇ」
思い出せもしない過去でした。あんなに外が好きだったのに、ジーノがザッキーを閉じ込めたのです。
「……」
ジーノはザッキーを手に入れたくて。ザッキーはジーノに飼って欲しくて。何がいけなかったのかわかりません。すべてがいけなかったのかもしれません。
 新緑は茂り、太陽は眩しく、きっと汗ばむ気候でしょう。でもこの部屋に季節はなく、ザッキーは静かに眠っています。
(食べなくちゃ)
食べてから休んでシャワーを浴びて、毎日毎日さなぎの元へ。繰り返し己の罪を見つめて、別れを忍んで現実に戻り。自分の全部をザッキーへ捧げ、祈り続ける、そんなジーノの日々でした。
「どれだけ僕を責めてもいいから……だからここに戻って来てよ」

      ジノザキ ,