ルイジ吉田withわんこ
【45600文字】
がっつりパラレルぐっちょりエロ、人族が犬族を支配するカースト社会で大金持ちの人族ジーノが二匹の犬族を手に入れるところから始まる童話風SF(童話風?SFか?)
考えながらの書きっぱなしで色々おかしいけど手のつけようもなくもはや推敲していく気力なし。いつも以上にライトな目線、完全に暇つぶし程度のお気持ちでご覧ください……二人とも選手じゃないの書いたのってもしかして初?かな?
バッキーが貰われていくその理由
深夜。
「バッキー」
「!」
振り向けばいつの間にかそこにジーノが立っていて、バッキーはドアノブを掴んだまま固まりました。
「そこで何をしているの?」
穏かな優しい口調ながら、全身が総毛立つような恐ろしさです。当然こんな風に怒られるのは、この家に来て初めてのことでした。
「これは、その……」
何かを言おうと思うのに、うまく言葉も出て来ません。
「じゃあ言い方を少し変えようか」
「……」
「寝ているザッキーに何の用?」
「……っ」
問われても返事が出来ません。理由が自分でもわからないためです。今日は夕ご飯をみんなで食べて、いつものようにお風呂に入り、おやすみなさいと挨拶をして、自分の部屋に行きました。大好きな枕を抱き締めて、明日を思って眠ったはずで、なのに気付けばここにいたのです。頭がなんだかもやもやしていて、なのに感覚は鋭敏で、夜の空気はキンと冷え、ジーノの視線も刺すようです。
「君の本性って結構獰猛」
冷笑の瞳、氷の言葉。ピシリと痛みが走ります。何故?戸惑いと疑問、少しの不満が浮かびます。
「どういう、意味ッスか?」
「わからない?」
「わかりません」
「そう?なんだ、意外」
「……」
「ともかくザッキーを虐めちゃ駄目ってこと。この意味はさすがにわかるよね?」
そう言われた瞬間のことでした。凍り付いた体を叩き割られたみたいにバッキーは悲鳴を上げて倒れました。
「こら、うるさくしないの。ザッキーが起きる」
「……か、……はっ」
「ね?こういうことはしちゃ駄目だ。痛くて、辛くて、苦しいし」
何が起きているのかわからなくて、混乱に涙が浮かびます。戸惑いの目で見上げると、やはりジーノは笑っています。
「さあ、見せて」
心の殻はまるでクルミのように強固なはずが、ジーノは桃の皮を剥ぐようにやすやすとバッキーを暴きます。怖くて震えて懇願するのに、まったく容赦がありません。中にはジーノの言うところの本性があって、目を逸らしたいのに一緒に見させられました。
「ほら、これが君の欲望」
今自分がここに立っていた意味。これからしようとしていたこと。ドアをこじ開け、眠るその人にまたがって。
「……やっ」
無理矢理自分に対峙させられ、呻き声と涙が零れます。
「君の『好き』は随分と乱暴だ。ふふ、まあそういうのも嫌いじゃないけど」
逃げ出すことも出来ない状態で時々ヒクリと体を震わせ、バッキーは、何故?何故?とジーノに悲し気に目で問います。
「何故?薬を抜いた。そのせいだ」
「……?、ぅ……」
「ごめんね?でも耐えられる子だけにすることだから」
ふわりと懐かしい甘い匂い。苦しそうだから少しだけだよと与えられて、痛みが少し和らぎました。感覚の鈍麻も始まります。ジーノが脱力するバッキーの体を抱き起こして、歩けるかい?と優しく問いました。
「バッキー、決して自分を手放してはいけないよ?でないとあれが現実になる」
朦朧とした意識の中で繰り返しなされるその囁きは、まるで暗示のようでした。
「……ザキさんのことが好きなんです。でも、あれは一体なんですか?」
犬の心は常に子供で、衝動の理解が出来ません。バッキーはジーノに言われるがまま、あれを暴力と認識しました。そのイメージで熱が灯るこの意味も、理由も全くわかりません。
「なんで俺、あんなこと」
「それだけ好きってことだよね」
「わからないです、王子、俺あんな……」
大きな涙をぽろぽろ零して、情けない顔で泣いています。
「うん、バッキー、そうだよね」
「あんな……王子、なんだかとても怖い」
「大丈夫だよ。制御できる」
ジーノはバッキーを励ましながら、よろよろの体を介助しながら可愛い猟犬の部屋へと送っていきます。枕を渡され布団を掛けられ、寝かしつけられながらバッキーは言います。
「怖い……何スか、あれ」
「バッキー」
「すごく怖い」
臆病なバッキーは繰り返します。自分に混乱しているのです。
「自分を嫌いにならないで。バッキーがどんなにいい子か、僕はちゃんと知ってるよ」
それを見つめるジーノの瞳は慈愛に満ちて、それでも眠りにつけません。
「僕は二人が大好きなんだ。だからちゃんと君らを守るよ」
「王子」
「『好き』って気持ちは素敵だよ。君の心もとても綺麗」
ちゃんと自分を見ろと繰り返されて、その度怖いと呟いて、でも頭を何度も撫でられ穏かに微笑まれると、なんだか少しだけ楽になれました。
「初めからこれだけ出来ればかなり優秀。バッキーは強くていい子だよ」
「……」
「大丈夫、ほら見て?」
目を閉じると煌めく世界が見えました。
「これが君の本質の望み。キラキラしていて綺麗だね」
初めて見つめる自分の世界を、ジーノが手を引き案内します。みんなでここに住みたいとバッキーが言うと、曖昧な表情でジーノは言います。
「そうだね、そんな日が来ればどんなにか」
甘い、怠い、心地よい匂い。体ががくんと重くなります。吸い込まれていくような急激な睡魔、彩りは空気に溶けるように消え始めます。ジーノは寝静まったバッキーを確認して、
「そのうちちゃんと自分で行ってね」
と言いました。バッキーがジーノと行った世界は、薬を使い、力を使い、ジーノが見せた夢でした。
「本当の君はきっともっと綺麗だ。そのうちちゃんとたどり着けたら、みんなで一緒に遊ぼうね」
*
お試しのお泊りが始まったのは、それからすぐのことでした。ジーノは穏やかに微笑みます。
(王子……俺、もっと頑張ります)
きっとこれが一番いい。怖がるばかりの僕のためにと、バッキーは静かに思うのでした。甘えるだけが犬ではない。みんながとても好きだから。
