お花結び

GIANTKILLING二次創作小説同人サイト

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ルイジ吉田withわんこ

【45600文字】
がっつりパラレルぐっちょりエロ、人族が犬族を支配するカースト社会で大金持ちの人族ジーノが二匹の犬族を手に入れるところから始まる童話風SF(童話風?SFか?)
考えながらの書きっぱなしで色々おかしいけど手のつけようもなくもはや推敲していく気力なし。いつも以上にライトな目線、完全に暇つぶし程度のお気持ちでご覧ください……二人とも選手じゃないの書いたのってもしかして初?かな?

        ジノザキ ,

犬を飼わない犬好きジーノ

 あるところに、とある美しい男がおりました。通称ジーノ、もしくは王子と呼ばれているその人の趣味は、気の毒な犬の里親探しです。
「いいねぇ、タイを結ぶのも前から比べて随分と上手になった」
ジーノに褒められて恥ずかしそうに笑ったのはバッキーです。ちょっと前に二匹まとめて引き取った素朴な犬のうちの一匹でした。
「ありがとうございます」
本当にどこにでもいるような平凡さのあるバッキーでしたが、二匹の落札価格はかなり桁外れなものでした。ジーノには欲しいものには糸目もつけず、強引に手に入れる癖があったのです。そうして買い受けた犬にはそれだけで落札価格の何倍もの値打ちが確定するほど、男の目利きには絶大な信頼がありました。
「ん、かわいい。じゃあ行こうか」
 バッキーは気弱な性質があったものの、猟犬として有能な資質がありました。ジーノの素晴らしさを恥ずかしそうに語り、その姿が微笑ましいと来客も増えました。賑やかなことが好きなジーノはだから、バッキーを大層可愛がりました。
「ザッキーも出掛ける準備出来た?」
 一方、一緒に引き取ったザッキーは、不愛想でプライドの高い犬でした。バッキーは気弱で人見知りで、でも散歩では時々はしゃいでしまって、怖いことが起きるとなれば自分が守らねばなりません。毛並み、姿勢、視線、警戒、散歩では意識せねばならないことが沢山あって、なのにだからこそ目の鋭さが様々なトラブルの元にもなるのでした。
 今日も道行く犬は勝手に吠えて、ちょっとした小競り合いが始まります。その度ザッキーは恥じ入る羽目になりました。ジーノは喧嘩が好きではなく、ザッキーも首輪を引かれるのは苦手です。我慢が足りないのもわかっているし、でも自分の悪口もジーノへの揶揄も、されると気持ちが荒れてしまいます。こんな時バッキーはおどおど震えるばかりで、ジーノはというと平然と笑っていて、ザッキーだけが一人憤って失敗を繰り返してしまうのでした。
「王子……俺は」
「ん、いいんだ。わかっているよ」
 ジーノは二匹の持ち主ではありましたが、まだ飼い主ではありませんでした。理由はわからないし聞けないし、でもそれを四の五の言われるのなんてとても我慢が出来ません。
「ごめんなさい」
「だからもういいって言ってるだろう?さあ、楽しいことを考えよう。散歩には笑顔が一番だ」
鑑札を持たないこと。持たせないこと。ジーノもバッキーも気にしていなくて、こだわっているのはザッキー一匹だけでした。

*

 犬族の主な役割は、警備、忠誠、愛玩です。戦闘力と従順性、美しい姿と品ある仕草。人はより素晴らしい犬を連れ歩くのを、ある種のステータスとしています。デザイナーによって研磨され価値が付与されるのが宝石であるならば、犬族はまさに生きている宝石と言えました。二匹はあの日ジーノに見出された、制作途中の原石なのです。
 落札価格にふさわしい待遇と教育。宝くじを当てたような幸運、奇跡。けれど価値にたどり着けたとは思えぬ現実の日々は、その意味を知るザッキーにとってはまさに地獄と同じでした。バッキーは確かに才能もあって愛嬌もあり、でもあてにすることは出来ません。彼は臆病で気がよくて、庇護する対象に過ぎません。ジーノは優しく穏やかで、でも彼もあてには出来ません。過保護で奔放なジーノが二匹に求めるものは、世俗のそれとはずれています。
「美味しい?バッキー」
ジーノは犬族と食事をしました。それはあり得ないことでした。
「ねぇ、ザッキーはどう思う?」
会議室に犬を連れて入ることはもちろん、話しかけるなど普通しません。犬は人ではないのです。
「どうかした?」
落としてしまったフォークを拾って片付けることこそ、犬族の誇りある仕事です。でも二匹はそれを拾えません。それがジーノの犬でした。ジーノの犬としての価値でした。
「おやすみ」
主のベッドの下で眠る幸も、安らぎも二匹は未だに知りません。二匹はそれぞれ部屋があって、人(の亜種)として眠ります。ザッキーはバッキーよりも年が上なので、犬としてのキャリアもあった分だけ異様な日々に苦しみました。誰にも愚痴など言えません。こんなに幸せなことはないのは当然、文句を言える立場でもないからです。臆病で気がいいバッキーを不安にさせるわけにもいきません。これが異常な日々なことを、無垢なバッキーは知らないのです。
「ねぇ、ザッキー。どうかした?」
「……」
何も、何も、言えません。でも。その目、その口、その表情、ザッキーが何も言わなくても、何もかもを知っている顔でした。
「ほら、ザッキー言ってごらんよ」
酷薄な口端が示唆します。
「バッキーは散歩で疲れて寝ているよ。ちゃんと人払いもしてあげた」
膝が小さく震えます。笑顔の意味を理解します。
「なんでそんなことを」
「君の心を触りたいから」
「だからそれはなんでかっていう」
「えぇ?それが理由じゃ駄目なのかい?」
刺すような視線、凍り付く体。今、ジーノとザッキーは、出会って初めてしっかりと上下の関係で立っていました。眩暈がします。震えます。犬族にとって、人に心を触られることは無上の喜びでした。生まれながら本能がそれを知っています。なのに、何故かザッキーは戸惑いの中。思いもかけないジーノの圧に、心臓がぎゅっと締め付けられます。
「おいで」
ごっそりと自らの意思を奪われて、ただ静かに後ろを歩かされ、初めて入る主の寝室、憧れのベッドのその下には、美しい敷布がありました。

――犬を飼わない犬好きジーノ

 それはあまりにも有名な噂でした。でも。
「な……あんた、犬が嫌いなはずじゃ……」
ジーノが犬を人扱いして愛玩するやり方を、虐待と言うような人もいました。ザッキーは犬族にしては高い知性があって、それをとっくに知っていました。
「ふうん、凄い。まだ話せるの」
「……っ」
「僕が、何が、嫌いだと?」
するりと頬を撫でられて、思わず息が詰まります。見たこともないような服従させる力。屈服せよとの圧力に膝が折れそうにさえなってしまいます。
「僕は座れなんて言ってない」
感じているのは恐怖でしょうか。それとも違うものでしょうか。とにかく、へたりこまないように必死で耐えると、ジーノはそれを褒めました。
(あ……っ)
心を弄られる不思議な触感。本能だけが知っている未知なる至福。体が溶けそうな喜びでした。心の尻尾が勝手に振れて、とても恥ずかしくも幸せでした。
「さあ、ザッキー。言ってごらん?」
「……」
「さあ」
ああ、こんなことは言いたくないのにと、でもあのプライドの高いザッキーがもう抵抗のひとつも出来ません。
「あ、あんたのやっていることは」
「うん、していることは?」
「……と、とても悪いことです」
うわ言のように絞り出したザッキーをじっと見つめて、続けて、とジーノは促します。その目はとても優しいもので、喜んでさえいるようでした。
「犬はそれを理解する脳がないのに、何を取り上げられてしまったのかもわからないのに……王子は、あんたは……とても残酷なことをしています」
ジーノは嬉しそうに微笑みます。
「犬は人を信じます……みんな幸せ……犬としての幸せを取り上げられてしまったことにも気付けないで……不幸はまるでないかのようで……」
「そう、みんな幸せだ。腹を立てるのは違うよね。なんで君はそうじゃない?君は何が不満なの?」
「……」
「いいね、よくモノが見える目、聞こえる耳」
いたぶられているのか、撫でられているのか。心は小さく震えていて、鈴のように澄んだ音を出しています。人はそうやって犬の心を楽しみ、でも犬は人の心には触れもしないし中身を見ることも出来ません。
「かわいそうに、ちょっと疲れたね」
座っていいよ、と許可が下り、へなへなと床に腰を落とします。体が泥のように重たくて、座れば少しは楽でした。でも圧はそのまま続いています。心臓がドキドキうるさくて、なのにどこかしら静寂で、チリリ、チリリと音もしていて、頭もぼうっとしています。
「ねぇ、知ってるかい?犬族がどうやって生まれるか」
頭をよしよし撫でられて、溶けていくみたいに安らぎます。賢くもザッキーは犬なので、愛玩を受けるのが好きなのです。どれだけ人扱いを受けようとも、プライドが高く素直じゃなくても、それでもザッキーは犬でした。どこまでも人が好きでした。
(ああ、なんだこれ、すっごく嬉しい……)
時々毛並みに逆らうジーノの撫で方。目を逸らすなと言わんばかりの強い視線。ゆっくりとジーノに抱き締められて、ザッキーの頭は真っ白になりました。
(気持ちいい……王子、あったかい……)
窒息しそうな強いハグに、すべてを任せて溺れます。命じられてそうなっているのではありません。自然に心が開くのです。
「君ならそのうち理解出来る。その日がとても待ち遠しいよ」
もう目も耳もまるで利きません。状況もさっぱり理解不能です。でも首筋の匂いを深く吸い込めば、体の隅まで満たされました。

      ジノザキ ,