ルイジ吉田withわんこ
【45600文字】
がっつりパラレルぐっちょりエロ、人族が犬族を支配するカースト社会で大金持ちの人族ジーノが二匹の犬族を手に入れるところから始まる童話風SF(童話風?SFか?)
考えながらの書きっぱなしで色々おかしいけど手のつけようもなくもはや推敲していく気力なし。いつも以上にライトな目線、完全に暇つぶし程度のお気持ちでご覧ください……二人とも選手じゃないの書いたのってもしかして初?かな?
初めての喧嘩と仲直り
ここ最近、ザッキーは自分に疲れていました。
「ずっと薬を使ってないからね。抑制されていた感情や衝動がどんどん暴れて、君を苦しめているんだよ」
「そうなんスか」
「まだお昼だけど枕で遊ぶ?必要ならコマンドで僕が抑えてあげてもいい」
「ごめんなさい」
「嫌だなぁ、謝らないで?ザッキーは十分頑張ってるよ」
自分が情けなくて落ち込むけれど、見てもらうことを思うとやっぱり気が晴れます。
「無理しないでね。そういうの、ちゃんと言うのも君のお仕事。じゃないと訓練が続けられない」
枕に甘えるザッキーにジーノは目を細めながら優しく言いました。
「使い方、随分上手になったねぇ」
腰の振り方を褒められるとゾクゾクします。ずっと見ていて欲しいのに、すぐ終わりそうで悲しい気持ち。チラチラとジーノの様子を伺えば、
「いいよ」
と頷いてくれました。
(あっ……来た……)
ジーノはコマンドで射精のコントロールが出来るのです。じわじわと甘く苦しいその圧が好きでした。待て、は適度なら最高のゲームで、ジーノは優秀なコマンド使い。やりこなせばうんと褒めてくれますし、良いことだとすっかりインプリンティングされています。
「大丈夫?苦しくない?」
訓練が日々好きになっていくザッキーでした。
*
もちろんですが、楽しいばかりの日々ではなく、高熱を出しうなされる時間も結構あります。今日はジーノのお仕事ついでに遠くへお散歩に出かける予定で、残念、延期になりました。
「ザッキー、やっぱり休むよ。一緒に居よう?」
けれど迷惑を掛けるのは何よりも恥だと思うザッキーは、先ほどそんなジーノを無理矢理追い出してしまったところです。なんとあの大好きなジーノに怒鳴りさえして。
(また、俺可愛げのねぇこと……)
最近ますます変なのです。こんな自分は嫌でした。でも自分ではどうにもなりません。だんだん息が荒くなるので、また熱が上がってきているようです。
(ごめんなさい、すっごく寂しい。いってらっしゃい)
ふて寝するみたいにベッドで転がっていたザッキーでしたが。
「ぅぐっ」
熱と感情が内臓を引っ掻き回し、トイレで吐いてしまいます。涙がポロポロあふれ出てきて、情けなさにますます涙が出ます。
(頑張れ、俺)
こんな時こそ傍に居て欲しい、あの人に。でもこれを乗り越えてこそ俺だと耐えるザッキー。
「……ぅえっ、」
ジーノの信頼に応じたいザッキーはでも、状態の危険度に少しずつ気付き始めていました。枕も効かない。ジーノもいない。射精して楽になろうにも今はそれどころではないのです。そして。
「!っ、ん、!」
とうとう、胃液が気道に逆流して、息が出来なくなりました。
(や、助けて、苦しい王子っ)
もう、もがく元気もないままに意識がだんだん遠くなります。
(王子、……王子、助けて……)
その人の顔がちらりと見えたような気がしました。このまま死んでしまうのかもしれないなんて、そんなことをぼんやり思っていたので、幻でもザッキーは喜びました。
(ごめんなさい王子……俺、駄目だった……)
バンバン強く背中を叩かれたり、擦られたり。
「馬鹿!なんだって君は!!」
ぐったりとその腕に体をすっかり預け。
「僕が鍵をこじ開けられなかったら一体どうなってたと思う!?聞いてる?ザッキー、僕はすっごく今怒ってるよ!?」
そんなの、説明されずともわかります。
「こんなになるまで我慢してっ!本当に君は大馬鹿者だ!」
激昂するジーノを初めて見ました。自分はとても悪い子なんだと、とても悲しい気持ちになりました。
気付けば、ザッキーは枕を抱き締めて眠っていました。懐かしい甘いあの匂いがします。
(あ……)
すぐにその意味を理解しました。投薬を受けてしまったのです。それはもう大層ショックな出来事でした。こうならないようにずっとずっと耐えてきたのに。薬でぼうっとした頭のままでも涙が出ました。それくらい強い悲しみでした。
「ザッキー」
丸まる背中の方向から声がします。大好きな人の声は優しくて、でも今は合わせる顔などあるわけがありません。あのまま戻ってこなければよかったと思うほどに。
「そのままでいいからよく聞いて。お利口なら今をちゃんと理解しよう」
もうザッキーは自分をお利口と思えません。そんなザッキーにジーノは言います。
「今日は本当に危ないところだった。いいかい?断薬の訓練は命と引き換えにしてまですることじゃない」
別にそんなつもりじゃありませんでした。ただ自分を過信していただけなのです。
「僕も悪かったね。謝るよ。頑張り過ぎてしまう優しい君を十分僕は知っていたのに」
ふるふると背を向けたまま小さく首を振ります。自分が馬鹿なだけだと思うからです。
「ごめんなさい……全部振り出しに戻してしまって」
「ザッキー、そうやって自分を責めないで?大丈夫だよ。薬も使った量はちょっとだし」
嘘はすぐにわかります。一番濃かった頃くらい強い酩酊があるからです。そうしないと鎮静しないくらい、危険な状態だったのでしょう。
「そのままじっとしててね、介入するから。今ならそんなに負担もかからないだろうし」
適度なコマンドは薬と同じに、体をじわじわ癒します。
「駄目かな……ザッキーには見せられないか。薬も十分浸透しているはずなのに」
「……王子?」
「ううん、なんでもないよ。眠ってザッキー」
ザッキーは薬もコマンドもあまり効かない犬で、また期待に応えることが出来なかったのだと深くその言葉に傷つきました。ジーノがそんな意味で言ったのではないことくらい百も承知で、だからこそ更に情けない気持ちになるのでした。犬として重大な欠陥があるからこそ、不可能に挑んで成功し、ジーノに褒めて欲しかったのです。
「他に何か僕に出来ること、ある?」
「……」
「こんな時くらい甘えてよザッキー、お願いだから」
チリリン、心が安らぎ音が鳴ります。駄目だったのにこんなにも優しくされて、また、薬の効果も少しはあったのかもしれません。悲しみの淵からほんのりと顔を上げることが出来ました。
「力になれることは一つもない?」
布団越しにぎゅっとジーノが抱き締めていて、今彼が何を願うのか理解しました。それは失望というよりも、同じ深い傷でした。人も不安に怯えます。それをこの状態に陥りながらも、ザッキーはちゃんとわかったのです。自分自身ではわからずとも、紛れもなく優秀な犬なのです。
(今の俺に出来ること……)
怠い体を僅かに動かし、頑張ってジーノに手を伸ばします。
「何?お水?」
小さく首を横に振るので、何?とジーノが耳を寄せました。
「抱っこ、して……」
それは、嘘偽りなく本心でした。ともすればこの甘い薬に引き摺られてしまうけれど、ジーノの温もりははるかにそれを凌駕するほど、ザッキーを根こそぎ癒してくれるから。
「ああ、ザッキー、君が好き」
甘えん坊の不器用が、今また頑張っているのです。何故その可愛いほっぺたに、キスをしないでいられるでしょう?当然ジーノも例外ではなく、キスしてぎゅっと抱っこしました。
「よしよし、ザッキーいい子だよ。元気になったら行こうね、お散歩」
睡魔に誘われ眠りに落ちて、ザッキーは昏々と朝まで寝ました。力ない腕でジーノに抱きつきながら寝息を立てて、静かに自分を癒すのでした。
